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投げやすそうで重たそうな吉田侑樹のウイニングボール

 泣くつもりでテレビ画面に見入ったのだ。そこで事件が起きた。インタビュアーはHBCの山内要一アナだ。初勝利おめでとうございます。「あざっす」。初のお立ち台のご感想はいかがですか。「最高です」。そんなやりとりが順調に続いていった。「今まで三回チャンスをもらって一回も勝てなかったんで、今回がラストチャンスと思って投げました」「最初に点を取っていただいたんで、攻めて勝ちにつなげようと思いました」。僕はちょっとじんわり来ていたのだ。

ーウインニングボールは持ってらっしゃいますか。あらためてどうですか、感触は?
 
「投げやすそうです」

ー重みなどはいかがでしょう?

「重みはあります。重たそうです」

 僕は山内要一アナを存じ上げている。温かみのあるトークが身上だ。この瞬間、吉田侑樹の意図は何か、どうフォローしたら丸くおさまるか頭がぐるぐる回転で計算したと思う。フツーに考えたら意味がわからない。ウイニングボールが投げやすそう? ウイニングボールが重たそう? とりあえず山内アナは笑い声をマイクに乗せた。

 ケースとしてはA「プロ初勝利の吉田が緊張のあまりわけわかんないことを言っている」が考えられる。これは山内アナとしては初々しさを拾っていく方向でフォローしたい。が、当の吉田が嬉しそうに笑っているのだ。これはもしかするとB「渾身のボケがすべっている」のかもしれない。だとしたら山内アナはとっさにツッコミを入れるべきだった。ウイニングボール投げんのかーい。ボールの重量聞いてへんわーい。吉田侑樹は大阪府寝屋川市の出身だ。それも考えられる。

 が、どう考えても急すぎるのだ。場をあっためてもいないうちにお立ち台で「ウイニングボール投げやすそう」と言われても。山内アナは奮闘努力して「ウイニングボールは(今日球場に来ている)両親に渡したい」を引き出すことに成功した。何とか感動路線に軌道修正だ。

ー直接、今、ご両親にお話しいただいてもよろしいですよ。

「ご両親っ、勝ちましたぁ!」

 その後、出てきた横尾俊建が苦々しい顔してるんだ。あれは笑った。どうやらC「糸井タイプがまた一人登場!」が真相のようだ。僕は日ハム球団にさっそく新グッズ「投げやすそうで重たそうな吉田ウイニングボール」の製作に入ってもらいたい。吉田侑樹、横尾俊建ホントにおめでとう&ありがとう。野球はやっぱり最高に楽しい!

80敗してちゃ貯金箱もからっぽ ©えのきどいちろう

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