新潟県三条市は「北の鳴尾浜」だった
信越線の東三条駅で降りたら無料の送迎バスが待っていた。法事にも使えそうなうす紫色のマイクロバスだ。「三条野球まつり」のために特別に用意されたものだ。乗り込むと阪神ファンが6割、ハムファンと特にどっちでもなさそうな人が4割。新潟県三条市も新鮮だが、阪神ファンとの呉越同舟も新鮮だ。「三条野球まつり」は阪神×日ハムのファーム交流戦。目指すは三条パール金属スタジアム(三条市民球場)だ。
バスに揺られて15分、球場は三条市総合運動公園の一角にあった。駐車場が広い。ここは独立リーグの「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」のホーム球場のひとつであり、大学野球サマーリーグの会場であり、阪神のファーム試合を開催する「三条野球まつり」の舞台でもある。個人的には三条といったら旧・三条実業(現・三条商業)出身の馬場正平投手、すなわちジャイアント馬場さんじゃないのかなぁと思うが、なぜか巨人じゃなく阪神なのだ。
バスを降りて案内ボードを見て爆笑してしまった。「8/19・20プロ野球ファーム交流試合 阪神対」の後、ちょろっと小さく「日ハム」と継ぎ足してある。「阪神対」まではフィックスなんだな。で、継ぎ足し部分だけ変更する。「三条野球まつり」は初開催の2009年以降、(2011年を除いて)常に「阪神対」だ。つまり、こう見えて「北の鳴尾浜」なのだ。夏の終わりの日曜日、まだ見ぬ野球を求めて北紀行だ。青春18きっぷだ。セミが盛大に鳴いている。いいところに来ちゃったなぁ。
試合前のファンサービスも充実している。もちろん阪神の選手だけだ。僕が到着したときはもう終わってたけど、今成亮太のサイン会での熟女キラーっぷりがさすがだったと阪神ファンが教えてくれた。今成はこの日(20日)、代打で1打席だけ見たけど懐かしかったなぁ。ファイターズ時代、鎌ケ谷で年じゅう見ていた選手だ。あの頃はいつかファイターズの正捕手になるかなと思っていた。
スター監督同士の豪華な対決
三条パール金属スタジアムは両翼99m、中堅122m、収容能力14,800人の素晴らしい地方球場。ネット裏の屋根の下に陣取ったが、こりゃ送迎バスより阪神ファンの比率高いなぁ。8割行ってるかな。多くは中年男性で、スタンドをすたすた歩き、あちこちで挨拶したりしている。顔見知りがすんごい多いみたいだ。対してハムファンはおとなしい。女性が多い印象。グラウンドではトラッキー、ラッキー、キー太の阪神のマスコット3体が暑いなか、張り切っている。スタメンが発表になった。
日ハム 1石井一(6)、2平沼(DH)、3渡邉(4)、4森山(7)、5高濱(5)、6森本(3)、7岸里(8)、8郡(2)、9姫野(9)、投手・吉田
阪神 1江越(9)、2高山(8)、3キャンベル(3)、4陽川(5)、5新井(DH)、6板山(7)、7荒木(4)、8小宮山(2)、9植田(6)、投手・松田
どう見ても阪神のほうが派手である。去年の新人王、高山俊がいる。江越大賀、陽川尚将、新井良太は1軍でもおかしくない。外国人のキャンベルがいる。ファイターズはワカゾーばっかりだ。ルーキーの石井一成がガス欠で2軍にいる。同じくルーキーの4番、森山恵佑は昨日の同カードで満塁ホームランを放ったそうだ。
それから2軍落ちしたばかりの藤浪晋太郎が帯同するかどうかに関心があったけれど、さすがに来てなかった。大谷翔平の唯一無二のライバルといえる球界の宝が心身のバランスを欠いて今、苦境に立っている。これまで駆け足でトントン上がった階段を今度は一歩ずつ確かめながら上がるのだろう。がんばれ藤浪! 明けない夜はない。
試合前、メンバー表の交換で阪神・掛布雅之監督、日ハム・田中幸雄監督が出てきたとき、おおっと声が出た。ファームとは思えないスター監督どうしだ。俺は掛布さんとユキオのこんな対決を新潟で見る人生だったんだな。ビバ俺の人生。ビバ新潟県三条市。外野スタンドは芝生席になっていて、ライトの阪神応援隊が早くも「六甲おろし」を景気よくやっている。近くの席の阪神ファンが「六甲を安売りすな、って昔なら言われてましたで」とディスりながら満更でもなさそうだ。