2020年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第5位は、こちら!(初公開日 2020年10月17日)。
* * *
ディープラーニング技術を利用し、ある人物が実際は行っていない言動を行っているかのように、動画や音声を合成する「ディープフェイク」は、来る米大統領選においても、世論操作に悪用される危険性が警戒されている。
そんななか、日本国内でもディープフェイク関連の一斉取り締まりが行われ、10月2日までに熊本県の大学生をはじめ3人の男が逮捕された。容疑はいずれも「名誉毀損と著作権法違反」である。
逮捕者が作成していたのは“フェイクポルノ”
これは、日本初のディープフェイク関連での逮捕例となったが、彼らが手を染めたのは政治的意図を持った世論操作などではなかった。彼らが作成したのは、ポルノ動画の女性出演者の顔を芸能人のものにすり替えたフェイクポルノだったのだ。
警視庁によると、フェイクポルノに無断で顔を使われた日本の女性芸能人は約200人にのぼり、作成された動画は3500本以上にのぼる。こうしたなか、サイバーパトロールを強化していたようだ。
初の逮捕者が出た10月2日、芸能事務所で作る日本音楽事業者協会も顧問弁護士のコメントを発表し、「早期にその芽を摘みたい」として警察の捜査に協力したことを明かした。
しかしここで断言したい。いくら日本国内で取り締まりを行ったところで、彼女らのフェイクポルノ被害はなくならない。なぜなら、日本の女性芸能人を利用したフェイクポルノの主要生産地は、中国であるからだ。
世界がディープフェイク対策に乗り出すなか、中国では……
筆者が昨年12月に確認した時点では、「Pornhub」や「X Videos」といった海外の大手ポルノサイトで、日本の人気女性アイドルや女優の名前を中国大陸で使用される漢字「簡体字」で打ち込むと、無数の動画がヒットしていた。そのうち、いくつかの動画を閲覧したが、顔と胴体のつなぎ目も違和感なく表情も自然で、一見してそれがフェイクとは見破れないレベルだった。
しかし今、これらのポルノサイトをのぞいてみても、フェイクポルノと思われる動画はほとんど投稿されていない。世界的にディープフェイクが社会問題となるなか、各国当局やポルノサイトが、対策に乗り出しているためと思われる。
ところが、中国語でタイトルが書かれたいくつかのポルノ動画の投稿者のなかには、プロフィール欄に「フェイクポルノ販売」をうたい文句に、外部のSNSへと誘導する内容を書き込んでいる者も少なくない。
そこで筆者は、そうして集客をしているフェイクポルノ販売業者のひとつにコンタクトをしてみた。