男性は環境を整えるサポート役を
竹原室長は「今の父親世代は、高度経済成長期終わりごろの、家庭を顧みずに働く父親の背中を見てきた人たちが多く、家で育児・家事も担うというロールモデルがなくギャップもある」と指摘する。父親自身が今の家庭の中での父親像を確立していかなければいけないことも育児に戸惑う父親の負担感の一つなのだろう。
産後すぐの時期の父親から母親へのサポートについては、産前産後の母親をサポートする一般社団法人ドゥーラ協会の宗祥子代表理事が次のようにアドバイスする。
「産後は、男性と女性の役割は違います。最近は優しい男性が多いので、出産後の母親と一緒にそのまま産院に泊まり込んで、赤ちゃんが泣いたらすぐに起きてあやしたり、授乳の手伝いをしたりする男性が増えてきました。でも、産後すぐの時期は女性と男性はホルモンの状態が違い、女性は短時間睡眠や授乳に生理的に対応しやすい体になっていますが、男性はそうではないので、全く同じ行動をとったら倒れてしまいます。産後の男性の役割は、女性が赤ちゃんの世話に集中できるように環境を整えることです。出産前に何が必要なのか父親と母親が一緒に考えておき、共同してうまく運ぶこと。もちろん、具体的な家事や育児の分担は必要ですが、母親と一緒になって行動することとは違います」
父親が客観的に状況を把握し、産後に動けない母親の代わりに買い物やヘルパーなどのサービスの情報収集や手続き、知人友人への依頼、自ら動ける部分の分担をするなど、環境そのものを整えるために動くことが大切だ。
東京都北区では父親のサポートに乗り出した
産後の父親サポートに向けて動き出した自治体もある。東京都北区では、5歳までの子どもを育てる父親を支援するためのプログラムを開いており、これまでに約90人の父親が参加。父親からは仕事・家事・育児のバランス、子どもとの関わりなど様々な悩みが寄せられたという。
プログラムの担当者は「(参加する父親は)育児に対して積極的で前向きな方が多く、仕事も、パートナーのことも一生懸命考えて行動しています。プログラム中、自分にはなかった考え方や行動を他の方の意見から発見されたり、同じような悩みを持つ父親同士で話し合って気持ちが楽になったり、プログラム終了後に子どもと積極的に遊ぶようになった方もおられました」と話す。
父親側にも潜む産後うつのリスク。産後うつと診断されるほど深刻な状態に陥らなくとも、そのリスクが高まれば、結果として家族全体が余裕をなくして子どもに悪影響を与えてしまう可能性がある。長時間労働の是正など個人の努力を超えた問題も大きいため、社会全体で子育てをしていくという意識改革が必要だろう。