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猪木さんが北朝鮮に行ったのは「諸刃の剣」

鹿島 さてここにきて、にわかに衆議院解散という展開になりました。今日はこの政局を踏まえつつ、文教族としての議員歴も23年目となる馳さんにお話を伺いますが、まず、馳さんの考える「解散の大義」とは一体何ですか?

 

 国民のみなさんに信を問わなければならないことは大きく3つあります。1つめは、やはり対北朝鮮政策。2つめは、消費税増税分の使い途。2019年10月に10%になる消費税のプラス2%分を、社会保障の4分野、医療、介護、年金、子育て支援、そして教育の機会均等の実施に使うことについて国民の支持を問います。そして3つめは、今自民党が提案している4項目の憲法改正案についてです。

鹿島 1つめの対北朝鮮については、プロレス出身の政治家・アントニオ猪木さんについてお聞きしないわけにはいきません。馳さんは猪木さんをどう評価されていますか? 先日の北朝鮮行きに意味はあるとお考えですか?

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 猪木さんは政治家としての私の出発点となる方のひとりですから尊敬しています。ですが、北朝鮮に行かれたことは諸刃の剣と言わざるを得ない。北朝鮮のプロパガンダを代弁する役割を果たしていると言われても仕方ないでしょう。ただ、そんなことは猪木さんも承知のうえだと思いますよ。外交は、国会議員や外務省だけではなく、民間人、文化人、スポーツマン、あるいは教育者、細い糸であってもそれぞれの立場でつないでおくものだと思っていますし、私自身もその努力はしています。

鹿島 2つめに挙げられた消費税についてですが、つい先日、9月12日の日本経済新聞のインタビューで安倍さんは、消費税を社会保障に回すことに慎重な姿勢でしたよね。ところが解散を決めたとたん急に争点だと言い出すのはいかにも唐突。わざわざ選挙で問わずに国会でどんどん論議を深めていけばいいのではありませんか。民進党の前原さんも同じことを言っているのだし。

 私は消費税の増税分を教育に使うべきだという主張なんです。幼児教育の無償化、高等教育の負担軽減策、つまり人材投資です。また、これからの産業界はAIやICT(情報通信技術)、ロボットなどに頼らざるを得ない時代になりますから、高等教育により専門人材の育成が不可欠です。さらに18歳で高等教育という単線ではなく、社会人にも経済的負担がない学び直しの機会を提供する必要があるのではないかと。平成生まれ世代は平均寿命が100歳の時代を迎えるわけですよ。日本はライフスタイルの見直しを迫られているのです。ですから、教育分野を社会保障制度に入れる必要があるのではないかと考えています。

 

馳文科大臣時代に進んでいった「加計問題」

鹿島 教育に力を入れておられることはよくわかりました。ですが、一方で「この解散に大義はあるのか」という議論が起こるのはほかでもなく、この解散が「安倍政権による森友・加計学園問題の追及逃れではないか」という疑念を呼ぶからではないでしょうか。

 森友・加計問題について問われれば、引き続き政府も、閣僚のみなさんも答弁する必要があると思いますよ。森友問題については、一方の当事者である籠池さんご夫妻の身柄が司法の手にゆだねられているので、起訴内容については司法が判断されると思いますが、何かあれば永田町も霞が関も協力する必要があると思います。

鹿島 加計問題についてはいかがですか? ちょうど馳さんが文部科学大臣を務めていたときに進行していた問題でもあると思いますが。

 

 私が文科大臣のときに事務次官に指名したのが前川喜平さんでした。当時、前川事務次官には、国家戦略特区には協力してほしい、ただし「石破4条件」をふまえて厳格に対応してほしい、制度設計が甘かったために人が集まらなかった法科大学院制度の二の舞になるようなことは避けるべきだという指示をしてありました。だから獣医学部新設を考えるにしても、石破4条件をふまえたうえで、教授の資格、カリキュラム、施設や備品などの基準、さらに薬剤研究者や都道府県の検疫担当官といった卒業後の需要までおさえておかないと必ず廃れるよと。愛媛県今治市の特区申請が認められ加計学園の申請が上がってきたわけですが、それまで10年近く申請が継続されてきた実績があったのは事実です。まして審議会は大臣であろうと一切介入できないシステム。安倍総理と加計さんの仲がいいから「頼むよ」「わかった」と決まるようなものではない。それは議事録を見ればわかると思います。