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「着込むスーツ」から「18メートルのロボ」へ 企画初期から支えたアニメーターが語る「ガンダムのはじまり」

「着込むスーツ」から「18メートルのロボ」へ 企画初期から支えたアニメーターが語る「ガンダムのはじまり」

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「ロボットものはいい大人がやる仕事じゃない」という思いの転換点

 それまでロボットものに対しては、どこか自分の中で「いい大人がやる仕事じゃない」という思いがあったわけですよ。

 そんな中、キャラクターデザインだけ担当した『無敵超人ザンボット3』で、宇宙人が巨悪として出てきて、その戦いによって地球がちょっとした戦時下に置かれる状況になり、避難民が逃げる……なんてシーンを富野氏が描いた。

 当時、俺は『宇宙戦艦ヤマト』で忙殺されていたから、『ザンボット3』はキャラを描くだけだったんだけど、絵コンテを見たらそんな展開になっていて、「何だこの話は!」って驚いて。あれは日本サンライズにとっても初の自社版権作品。参加したかったという思いはあったんだけどね。結局、評価としては金田伊功さんの仕事だけが残ったという印象が強いよね。

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安彦良和氏の描いた「78年夏 サンライズ企画会議」(イラスト:安彦良和)

『宇宙戦艦ヤマト』は昔懐かしの戦記ものだけど、こっちも毎回ハッピーエンドではなく、続きものとして描かれている。だから、明らかにターゲットが幼児向けではないのがわかって、「今までのアニメとは違うな」という印象がすごく強かった。「ああ、こういうのもありか」という感じはしたよね。

 同じ時期に『アルプスの少女ハイジ』が出てきて。確かに、それ以前でも『ルパン三世』とか、虫プロの『クレオパトラ』とか、ハイターゲットのものはあったんだけど、その中でも『ヤマト』は今までにない感じの作品で、そこに関われるのは良い経験だなと思ったけどね。

「何だかよくわからないから面白い」

 富野氏の出した企画の何が面白かったのかと聞かれるとわからないんだけど、とにかく何だかよくわからないから面白いっていう。「これは何かあるんじゃないのか?」って感じで。大体、それまでの企画は「侵略されたから戦おう!」みたいなわかりやすいというのが、ある意味難点だったから。一般的な視点からは、ちょっとわかりづらいというのがいいなというのはあったんだよね。

写真撮影=文藝春秋

安彦良和 マイ・バック・ページズ

安彦 良和 ,石井 誠 ,安彦 良和

太田出版

2020年11月26日 発売

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