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「富野氏は、影でいろいろと書いて進めていたんだよね」

 とにかく、グダーっとしていて、アレもダメ、コレもダメという感じで。ただ、富野氏は、影でいろいろと書いて進めていたんだよね。その場では彼はすぐに提案しなかったけど。グダグダしていても出てこないから持って帰ってそれぞれ宿題として考えるという感じでお開きになって。そんな感じじゃいい企画なんて出るわけがない。

 何か言って恥をかくの嫌だから、適当な思いつきなんか言わないよね。そんな中で、次の会議の時に富野氏が意見を出してきて。俺は「よくこんなものを書いたな」って感心したけど、よく見ると日付が書かれていて、2~3ヶ月かけて書かれているのがわかってね。「そうか、前から書いていたのか」って。それはかなり後になってから気付いた。

 その富野案が出てからは、あとは早かった。対抗馬もないし、わけがわからないところがいいんじゃないかと。そういう感じで、そこから細かいところを詰めていったと。

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タイトルを変更しながら企画が練られていった

 富野由悠季が出した最初期の企画のタイトルは『フリーダムファイター』。当初は、ジュール・ヴェルヌの書いた冒険小説『十五少年漂流記』をベースにした、SF作品として企画されており、ロボットアクションものではなかった。

 その後、スポンサーである玩具会社のクローバーの意向なども取り入れられ、ロボットアクションものへとシフト。『ガンボーイ』、『宇宙戦闘団ガンボーイ』とタイトルを変更しながら企画が練られていく中で、その後の世界観のベースとなる「スペースコロニーに移住した人類と地球に住む人類による戦争」を背景とした作品として洗練されていくことになる。

本の冒頭に描かれた『機動戦士ガンダム』第1話の原画 ©️創通・サンライズ

安彦 企画の詰め方に関しては、前後関係でわからないところがあるんだよね。

 友人の高千穂遙から、ハインラインの書いたSF小説『宇宙の戦士』が面白いから読めと言われて。そこから得たパワードスーツのアイデアがあり、スタジオぬえのデザイナーだった加藤直之がデザインしたものもあって、「ロボット、ロボットとばかり言ってないで、こういうのもあるんだから」とヒントをもらったりしていたんだけど、それと富野メモが出されたのはどちらが先だったかわからない。