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「着込むスーツ」から「18メートルのロボ」へ 企画初期から支えたアニメーターが語る「ガンダムのはじまり」

「着込むスーツ」から「18メートルのロボ」へ 企画初期から支えたアニメーターが語る「ガンダムのはじまり」

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「なんだかよくわからないけど新しかった」パワードスーツ

 富野メモを読んだ時には、とても新鮮な感じがあって、無から有が出たというイメージが残っているから、物語の設定とロボットのデザインというふたつの案件は別進行だったんじゃないかなと。

 ただ、パワードスーツというのは、なんだかよくわからないけど、フレーズとしては新しい。それは、俺もそうだし、山浦さんも、たぶん富野氏も、大河原邦男さんも共通のヒントとしてもらっていると思う。

「2メートルちょっと」から「18メートル」へ

 ただ、当初は完全に人間が着込むやつで、身長も2メートルちょっとだった。あの頃のアニメのロボットは、身長も100メートルとかになっているのもいて、そんなものはレイアウトができない。民家を入れて描けなんて言われても小さすぎちゃう。

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 そんな中で、2メートルという案が出るんだけど、それもかなり極端だから、最終的には18メートルになった。あれは、5~6メートルに収まっていればもっとリアリティがあったのかもしれないよね。

安彦良和氏 ©️文藝春秋

「ロボット兵器」は“先祖返り”だった

 そんな『ガンダム』の企画に対して永井豪さんに後から「兵器という発想にはやられた」って言われたことがあったのも意外だった。

 結果的に、「ロボットが兵器だった」という発想は横山光輝さんが描いた『鉄人28号』に先祖返りしているわけでね。鉄人は軍の試作兵器という設定で、そこから永井豪さんのマジンガーシリーズが生まれたわけだけど、永井さんの頭の中に「ロボットが兵器である」という発想がなかったというのは面白い。

 安彦も「ロボットを兵器として扱う」というアイデア、そして人類の戦争が行われている状況でそれが使われるという設定に関しては、大いに納得できるところがあったようだ。

 それは、それまで描かれてきたロボットアニメにおける「敵」の存在を描くにあたってのリアリティの欠けた存在感やそれを描写していく苦労、設定に大きな変化がないパターン化という問題点を解消し、満足のいく設定付けができたからであった。

安彦 ロボットアニメで描かれる荒唐無稽さに、何が何だかわからない敵が毎週攻めてきて、「今週も地球を守ったぞ」というのは、やはり乗りきれない。そういう意味では、兵器というのは面白いなと。