“高い金を払ってるから何をしてもいい”
ラウンジもキャバクラも時給制の仕事。収入は個人の成績によって変動するが、後藤さんは給与から源泉やヘアメイク代などが控除され、手取りは約25万円ほどだったという。
「給料はそこそこもらってましたが、売れっ子というわけではないし、テキーラ一気飲みのチップはお店を通さず全額受け取れるのが魅力でした。店も黙認していたので、みんなやっていたと思います。なので、キャバクラの女の子たちが酔っ払ってバックヤードでぶっ倒れている光景は珍しくありません。お酒が弱い子には、ウーロンハイといって烏龍茶を出してくれるお店もありますが、お酒ではないと気づいて怒るお客さんもいるので、諸刃の剣ですね」
バックヤードは死屍累々。想像していたよりもハードな仕事だった、と後藤さん。
「しかも、接客中は『お前ブスだな』とか『お酒飲めないのになんでキャバやってんの? 帰れよ』とか、暴言を吐かれることも多いです。私個人の見解ですが、キャストに対して“高い金を払ってるから何をしてもいい”と思っているお客さんほど、暴言を吐いたり、お酒を強要したりする傾向がありました」
面と向かって「お前も男を金づるだと思ってんだろ」と凄まれた経験もあるという。仕事と割り切るまでは大変だった、と振り返る。
身も心もボロボロ
「場数を踏んで流せるようになりましたが、普通に考えたら暴言なんて吐かれないほうがいいですよね。お客さんもストレスを発散しに来ているのはわかりますが、さすがに100%の悪意を向けられるとかなりこたえます」
後藤さんは現在、現役を退き、昼の事務職をしている。収入は減ったものの、精神的なストレスはかなり軽くなったそう。
「優しいお客さんもたくさんいましたが、身も心もボロボロになったので、稼いだ金額よりもマイナス面のほうが多かったような気がします。それに、当時稼いだお金を何に使っていたのか、あんまり覚えてないんですよ。悪銭身につかず、ですね」