「文藝春秋」1月号の特選記事を公開します。(初公開:2020年12月21日)

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 2021年1月、アメリカでは政権交代が起こり、ジョー・バイデン新大統領が誕生することとなる。

 2017年のドナルド・トランプ政権の誕生により米中対立が激化するなど世界は混乱に陥ったが、バイデン政権でどんな変化が起こるだろうか。

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バイデン氏 ©共同通信社

「文藝春秋」1月号では、大座談会を開催し、京都大学名誉教授の中西輝政氏、東洋大学教授・慶應義塾大学名誉教授の竹中平蔵氏、日本総研上席理事の呉軍華氏、早稲田大学教授の中林美恵子氏の4名に、今後の日米中関係について語り合ってもらった。

 注目するべきテーマの一つは「安全保障」だ。中西氏、中林氏、呉氏は、特に台湾を巡る米中対立を次のように分析する。

大国同士が一触即発の“肝試し”

中西 2020年は、安全保障の面で米中関係が非常に緊迫した年でした。特に7月、南シナ海でほぼ同時期に米海軍と中国海軍が軍事演習をおこなったことには驚かされました。大国同士が一触即発の“肝試し”のような状態になったのは、米ソ冷戦のいちばん激しい時にしかなかったことです。この数年、中国は南シナ海に軍事拠点を展開してきましたが、それが夏から秋にかけて徐々に台湾海峡に収斂してきているのも気になります。

習近平中国国家主席 ©時事通信社

 なぜ中国が台湾にそれほどこだわるのかといえば、「中台統一」こそ、習近平が最高権力者であり続けるための大義名分だからです。あと5、6年もすれば人口動態の問題で中国経済はいよいよ停滞期に入ってくる。そうなった時、共産党政権の「突破口」は台湾だというわけです。その点で2020年5月の李克強首相の全人代での演説は注目に値します。李首相は、例年使ってきた「中台の平和的統一」から「平和的」という言葉をわざわざ落として「中台の統一」と言った。これは強制的手段による統一を匂わせているわけです。11月には、中国軍の制服組トップの許其亮(党中央軍事委副主席)が「受動的な戦争適応から能動的な戦争立案への転換を加速する」と表明しています。つまり、「こっちから仕掛けるぞ」ということですね。

中林 トランプ政権が相次いで高官を派遣し台湾との距離を縮めていることへの警戒もあるのでしょうね。台湾との接近は、中国へのシグナルになるし、さらに武器を売れるというメリットがありました。ただ、アメリカが台湾を守るために中国と一戦を交えるかといえば、それは絶対にない。コストに見合わないですから。