大混乱のアメリカ大統領選挙は、トランプ大統領が法廷闘争に出ているが、民主党のバイデン前副大統領の当選が確実となった。2021年からの世界経済はどのように変化するのか? そして、日本企業が備えるべきことは何か?
著書『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える 』(ともに文藝春秋)がベストセラーとなった経営共創基盤(IGPI)グループ会長で、日本航空など数多くの企業再生にかかわってきた冨山和彦氏に聞いた。
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バイデン新政権が誕生したら日本企業にどんな影響が?
大接戦だったアメリカ大統領選で、民主党のジョー・バイデンの当選が確実となったことで、「バイデン新政権が誕生したら、日本企業にどんな影響があるのか?」といった質問が私のもとに寄せられている。
そんな質問の前提には、「トランプがホワイトハウスから去れば、正常なアメリカが戻ってくる」と考える人が多いということがあるのだろう。マスメディアの論調もそうだった。
人種や貧富の差が生むアメリカ国内の分断も、米中対立に代表される国家間の分断も、元凶であるトランプがいなくなれば解消される、という発想だ。しかし、国内の分断も国家間の分断も、バイデンが新大統領となっても変化することはないと、私は考えている。
国内の分断をみれば、根っこに経済的な構造の問題がある。インテリの金持ちが集まる空間と、大多数のそうでない人たちの空間が歴然と別れ、分断が起きている。
GAFAのように、新しい産業の勃興はMITやスタンフォード大学を卒業したインテリたちが牽引している。グローバル市場の勝ち組は多額の報酬を受け取り、その子どもたちがまた高学歴のインテリとなってスタートアップ企業を興す。この20年間にそういう連鎖と階級の固定化がじわじわと進んできた。
インテリたちの空間に入れない大多数の人たちは反発心を覚えて、その埋めがたい溝から分断が生じた。反発心を抱く側には白人も多い。アメリカ全体で白人はおよそ6割いるのに、一流大学のトップ層では半分もいない。インテリ層に入れない白人の不満は大きい。アメリカの社会問題は、こうした構造から生じたものが大半だ。
アメリカは、もはや「移民歓迎」という国にもならない。アメリカにいる移民たち自身がいまでは既得権者となって、「仕事を奪われるから、それは勘弁してくれ」と主張しているのだ。