世界中が固唾を呑んで見守った米大統領選挙。

 韓国メディアも現地に記者を送り、その行方を逐一、詳細に報じていた。「米国大統領選挙をこれほど熱狂的に報道することは過去にはなかった」(中道系紙記者)といわれるほどの過熱報道の背景には、予測不可能なトランプショーが続くのかやバイデンになった場合対北問題はどう動くのかへ関心が集まった、はたまた、最近、株投資がさかんだといわれる20~30代の経済的関心の高さから注目が集ったなどなどさまざまに分析されていた。

 世論調査(韓国ギャラップ、9月4日)ではジョー・バイデン前副大統領が人気で、「どちらに当選してほしいか」という質問では、トランプ大統領16%、バイデン候補が59%という結果がでていて、トランプ大統領の登場により「米国の地位が弱体化した」とする人が49%いた。

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文在寅大統領 ©getty

「韓国は不安になっている」

 一方、バイデン前副大統領の当選確定で「複雑な心境でしょう」(前出記者)とされるのが、文在寅大統領と親文派(与党の中で文大統領支持派)だ。新しい米国大統領の誕生で、韓国で真っ先に取り沙汰されたのはやはり対北問題だ。メディアはさかんに「韓国は不安になっている」と表現している。前出記者は言う。

「バイデン前副大統領は大統領選挙の討論会で、北朝鮮が核の能力を縮小することに同意しなければ金正恩委員長とは会わないとし、金正恩委員長のことを『悪党(Thug)』と評しました。この縮小という言葉の意味について韓国では論争がありましたが、いずれにしても、オバマ元大統領と同じく『戦略的忍耐政策』をとると思われ、米朝関係は再び膠着する可能性が高い。北朝鮮が米新政権の関心を引くためにミサイルを発射するのではないかという憶測も出ています。

ジョー・バイデン前副大統領

 文大統領は残りの任期までに第4回南北首脳会談を開催することが悲願といわれていますから、理念は米民主党に近くとも対北政策では相反するという矛盾に複雑な心境でしょう」

 そして、対北問題に加え、日韓問題についても米国から何かしらのアクションがあるのではないかという声も出ている。保守寄りの対米専門家は言う。

「米民主党は、文政権が慰安婦合意(2015年12月)を『和解・癒し財団』を解散させて事実上破棄した(2019年7月)ことについて批判的な立場でした。米国から再び、慰安婦問題などの解決について何らかのアクションがあるのではないかと見られ、韓国は対日でもさらに苦しい立場に置かれることが予想されます」