新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態は、世界経済に甚大な影響を及ぼしている。しかし、このコロナショックを「日本企業が過去の呪縛を断ち切るチャンス」と捉えているのが、ベストセラー『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』(文藝春秋)の著者で、経営共創基盤(IGPI)グループ会長の冨山和彦氏だ。

 日本航空、カネボウなど数多くの企業再生にかかわってきた冨山氏に、コロナ後の“日本経済の再建案”を聞いた。(全2回の2回目/前編から続く)

冨山和彦氏 ©️文藝春秋

日本企業はコロナショックを生かせるのか?

――前編では、コロナショックによる企業の倒産は、セーフティネットさえあれば悲惨なことではなく産業の新陳代謝になるというお話がありました。では、実際にいまの日本の産業界では、どのような変化が出始めているのでしょうか。

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冨山 重要な点は、コロナショックによって否応なしに、企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が加速していることです。ロックアウトや巣ごもり生活で、リモートワークが普及し、全体的にITリテラシーは高まりました。「時間があったから、動画編集を憶えた」という人もいます。

『コロナショック・サバイバル』に続けて刊行した、『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』(文藝春秋)でも詳しく説明しましたが、DXが加速すると“日本的カイシャ”はいよいよ存続が難しくなります。終身雇用制で同質化した日本型の組織は、DXがもたらす破壊的イノベーションに対応できないからです。 

 90年代以降、IT活用による産業構造が変るほどの破壊的イノベーションがたびたび起こりました。今回のDXも、90年代のIT革命、デジタル革命の先にある流れですが、このコロナショックを乗り越えるためにも、今回こそ変わらなければなりません。

――90年代にグローバル革命、IT革命が起きたときも、日本企業の体質は変わらなかったのでしょうか。

冨山 変わっていませんね。もっと言えば、1950年代にはじまった高度経済成長期から本質的には変わっていません。

 90年代に押し寄せたIT革命では、テレビなどのエレクトロニクス分野が、壊滅的ダメージを受けました。それまでの花形産業が一気に凋落したのは、製造プロセスを一新するIX(Industrial Transformation)の波に乗り遅れている間に、台湾や韓国、中国が生産性を高めていったからです。