“コロナショック”の影響は日本経済にどこまで広がるのか――。コロナ倒産が30万社を超えるとの推計もある中で、経済の先行きの見えない状況が続いている。私たちはどんなシナリオを想定して備えるべきなのか。
著書『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』(文藝春秋)がベストセラーとなった経営共創基盤(IGPI)グループ会長で、日本航空など数多くの企業再生にかかわってきた冨山和彦氏に聞いた。(全2回の1回目/後編へ続く)
日本経済は「3段階で重篤化する」
――5月に発売されて以来、版を重ねている著書『コロナショック・サバイバル』のなかで、冨山さんは「史上最大の経済恐慌を回避せよ」と警鐘を鳴らしました。執筆からおよそ半年が過ぎて、日本経済はどのような局面を迎えているのでしょうか。
冨山 いたずらに危機感をあおるのはよくありませんが、私が想定した最悪シナリオに少しずつ進んでいるように見えます。
本の中で、初めに打撃を受けると予想したのは、地域に根ざしたサービス産業などのローカル経済(L)です。コロナ禍のさまざまな行動制限によって、観光、飲食、エンタメ、生活必需品以外の小売業などを中心に打撃を受けました。現在の日本では、働く人の約8割がこのL型産業に従事し、GDPの約7割を占めています。
第2の波を受けるのは、自動車、電機など海外市場にも製品を供給している大企業のグローバル経済(G)です。自動車のような耐久消費財は、大多数が買い替え需要なので、危機が訪れたら数年は買い控えられてしまう。急激な消費停滞によって需要消滅のショックを受けたのです。
そして第3の波を受けるのが、経営難の企業を資金面で支えてきた金融機関などのファイナンス領域(F)です。売上減が数週間で終われば、企業は資金繰り融資でなんとか凌げるでしょうが、それが半年、1年になれば返済能力が弱まり、金融機関のバランスシートが傷みだします。そこから大規模な金融危機に至り、日本全体の経済システムが壊れる恐れもあります。
つまり、日本経済の重篤化は「L→G→F」の3段階で進む。金融サイドで始まった2008年のリーマンショックとは全く順番が逆です。