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 実際に、業種によって濃淡はあるものの、L型産業は人々の外出が減ったことで大打撃を受け、G型産業は欧米市場が落ち込んだままで回復の見通しが立ちません。Fのほうは、政府の無利子融資制度や補助金、助成金などで、なんとか危機の顕在化を防いでいるといった状況です。破壊的な危機が見えないだけで、実態はかなりひどい状態になっています。

巨大なバブル? 金融の世界も未知の領域に

――実体経済が打撃を受けながら株価はそれほど落ち込んでいませんが、この危機が続くと、「いつまで日本経済は持ち堪えられるのか?」という疑問がわきます。

冨山 リーマンショックでは、株式市場など経済システムの本丸が壊れたので、元に戻すのが大変でしたが、コロナショックはそこが壊れたわけじゃない。経済システムは動く分、各国の政府と中央銀行がお金をたくさん刷る量的緩和策で、ここまではなんとか支えられています。

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※写真はイメージ ©️iStock.com

 ただし、副作用もある。お金を世に出しても資金需要はないから、貯金や投資にまわってしまう。株価も、土地の値段も思ったほどは下がらないし、むしろゴールドのように値が上がっているものもある。美術品なども値上がりしているでしょう。

 これは予想されていたことですし、そもそも日本は、株式や土地といったストック(資産)はインフレ、経済活動のフロー(収入/支出)はデフレというアンビバレントな状況がずっとつづいていました。いわゆるバブルなのです。コロナショックによって、バブル傾向が世界的に広がり、慢性化しつつあると考えると分かりやすい。

 そんな状況ですから、「お金を刷りつづけたら財政が悪化して、通貨の信用が失われてしまう」と心配する声も挙がっていますが、「いまのところそういう気配はありません」としか言いようがない。それが安定的均衡なのか、巨大なバブルなのかは、まだ誰にもわからないんですよ。つまり新型コロナによって、私たちの暮らしがニューノーマル(新常態)になったのと同じように、金融の世界も、未知の「ニューノーマル」に突入しているのです。