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――マスコミでは「コロナ倒産」「コロナ廃業」の件数が伸びて、大きな問題として取り上げられています。

冨山 日本では、企業の倒産や廃業がものすごく悲惨な出来事として扱われます。その一方で、創業数百年の老舗企業がもてはやされる。数百年つづく企業は確かに立派ですが、だからといって倒産や廃業が悲惨なことではありません。

 市場がなくなった産業、環境適応できない企業が退いて、新しい産業と企業が登場する。市場はその繰り返しで成り立っています。産業の新陳代謝は、大昔から繰り返されてきました。

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コロナショックをチャンスにするには?

――しかし、日本では倒産や廃業にネガティブな印象が付きまといます。

冨山 そもそも「企業」という法人格は、法律上のフィクションです。倒産や廃業に心を痛めるのは、日本人らしい擬人化で、海外ではそこまで悲惨なことではありません。

 もちろん、経営者が倒産で再起不能になったり、従業員と家族が路頭に迷ったりするような事態は防がなくてはいけません。でも、セーフティネットさえしっかりしていれば、コロナショックによる倒産や廃業も、産業の新陳代謝がスピードアップしたともいえます。ですから、倒産件数ばかりを気にする必要はないのです。

 バブル崩壊後、日本経済が“失われた30年”を過ごしてしまったのは、そのような産業の新陳代謝が遅れたことが最大の原因です。日本企業が、この破壊的イノベーションを避けた結果、国際競争力が弱まり、グローバル競争で苦しい戦いを強いられた。

※写真はイメージ ©️iStock.com

 コロナショックで経営不振に陥り、お客さんから惜しまれながら廃業したお店はたくさんあります。そういうお店は、また環境が変われば、復活する可能性は十分にあります。経営者に意欲さえあれば、さらに工夫を凝らして再起し、よりよい店をつくることはできる。そういう生まれ変わりも含めて新陳代謝が進めば、コロナ後の日本経済はより豊かなものになるはずです。(後編へ続く)