中国頼みはもう通じない
――リーマンショックのときは、拡大する中国市場に頼って世界経済は回復しましたが、冨山さんは今回の危機について「中国頼みの回復に大きくは期待できない」(『コロナショック・サバイバル』)と書かれています。
冨山 中国は、10年前と比べて少子高齢社会に入って人口ボーナスが消えていますし、格差拡大によって中産階級の購買力が失われています。日本の自動車メーカーは中国市場を頼みの綱にした“一本足打法”ですけど、今後はどこまで期待していいかはわかりません。
そういう中国市場の動向もあって、新型コロナが流行する前から「世界は長期の不況モードに入る」との予測は聞かれました。もともと世界的に成長力が弱まっていたところへ、コロナショックがドーンときたわけです。
では、この苦境の中で、日本企業をどうやって回復基調に乗せるかといえば、やはり生産性を向上させることです。コロナショックによって、生産性の上昇率も下がっています。いま求められているのは、その場しのぎのコロナ対策を超えて、日本企業の生産性を高めて、その果実を一般の人々に広く分配することです。企業の生産性が高まっても、従業員の給料が増えなければ、市場の購買力は弱いままです。
一部のお金持ちがさらに儲けても、経済はよくなりません。“世界一の投資家”ウォーレン・バフェットがいくらコーラが好きだといっても、1日に100本は飲めませんから。みんなで豊かになったほうが、コーラの売上は伸びる。経済格差の拡大は、倫理的な問題として議論されがちですが、消費の停滞を招くという経済問題につながります。
中国のような有望な市場がない以上、コロナ後の経済回復では、どうしても「生産性の向上」と「果実の分配」が重要となってきます。