「可愛い声だね。友だちと一緒に遊びにおいで」ーー1本の間違い電話をきっかけに、レイプ事件に巻き込まれた14歳の女子中学生。時を追うごとに被害はエスカレート。最終的に41人に暴行されただけじゃなく、ネット民からも弄ばれた彼女のその後とは……。実際に起きた事件などを題材とした映画の元ネタを解説する文庫新刊『映画になった恐怖の実話Ⅲ』(鉄人社)のダイジェスト版をお届けする。

写真はイメージ ©getty

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韓国最悪のレイプ事件

 2018年公開の韓国映画「マリオネット 私が殺された日」は、集団レイプされてその動画をネット上で拡散された過去を持つ女性教師の悪夢を描いたミステリー作品だ。この映画が題材としたのは、実際に韓国で起きた「密陽女子中学生集団レイプ事件」。高校生41人が1人の少女を暴行し続けたこの事件は、警察や加害者の親たちの対応も含め、韓国社会の人権意識の低さを象徴する事件として記憶されている。

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 事件のきっかけは2004年1月、韓国南東部の蔚山に住む中学2年の女子生徒Aさん(当時14歳)の間違い電話だった。女友達に電話をかけるつもりが、誤って密陽に住む男子高校生キム(当時18歳)につながってしまう。「可愛い声だね。友だちと一緒に遊びにおいで」というキムの誘いに好奇心を刺激され、Aさんは妹(当時13歳)と従姉妹のBさん(当時16歳)を連れて密陽へと向かった。

 しかし、彼女たちを待っていたのは「密陽連合」と呼ばれる不良集団のリーダー、パク(当時18歳)とその手下たちだった。彼らは3人を脅迫して暴行を加え、旅人宿に連れ込んで集団でレイプした。