40人近い男が、1人の少女をレイプ。さらに彼女を守るべき人間の多くがそれを怠ったことで、被害が深刻化した「韓国・密陽女子中学生集団レイプ事件」。平成14年に起きた同事件、周囲の大人たちの対応があまりにもひどかった理由とは? 実際に起きた事件などを題材とした映画の元ネタを解説する文庫新刊『映画になった恐怖の実話Ⅲ』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする(全3回の2回目/最初から読む)
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金欲しさの父親に説得され加害者と示談
こうした警察の人権侵害行為に対し、国家人権委員会が調査のメスを入れ、同年12月13日、蔚山南部警察署は被害者を卑下した発言などを認め、警察署長が謝罪。捜査責任を持つ幹部4人が問責人事処分(責任を取って辞職)となるが、同日夜、彼らは蔚山市内にあるカラオケボックスで酒を飲みながら、被害者の実名を口にして「胸くそ悪い」などと暴言を吐いたという。
さらに、韓国国内の反応も極めて冷たかった。事件がテレビで大々的に報道されたことで好奇心丸出しの“ネチズン(インターネットユーザー)”が被害者女性の個人情報を突き止め、実名や顔写真をネットにさらしたのだ。
こうした異常なまでの誹謗中傷にさらされたAさんはうつ病、パニック障害など数々の精神疾患を発症、ソウルの病院の精神科へ入院する。そして、彼女の病床には毎日のように加害者の親が訪れ、慰謝料支払いによる和解を迫る。むろん、合意する気持ちは毛頭ない。が、金欲しさに示談に応じるよう彼女を説得する父親と親類。
