なぜこんな高額な生命保険に――。
2003年8月、その2カ月前に発生した、福岡市に住むAさん(41)と妻のBさん(40)、息子のCくん(11)、娘のDちゃん(8)が殺害された「福岡一家4人殺人事件」の取材をしていた私は、家族が加入していた生命保険についての詳細を入手した。
総額にして1億8700万円もの保険金
それはA家が、1994年12月から96年8月にかけて外資系生命保険会社と、さらに98年9月に国内の生命保険会社との間に結んだ契約で、総額にして1億8700万円もの支払いがされるものだった。
その内訳(かっこ内は月々の支払額)は、以下の通りである。
Aさんが死亡した場合(以下同)に1億2000万円(9万4000円)、Bさん2500万円(1万8000円)、Cくん2100万円(1万6541円)、Dちゃん2100万円(1万6052円)。
掛け金の総額だけで、月々に14万4593円もの支払いをしていたのだ。
ちなみに受取人については、Aさん死亡の場合はBさんに、Bさん死亡の場合はAさんに、CくんとDちゃん死亡の場合は、各1000万円がAさんに、各1100万円がBさんにとなっている。
受取人が全員死亡の場合、どうなるのか生命保険会社の社員に尋ねたところ、次の答えが返ってきた。
「全員が死亡している場合は、親族などの法定相続人に保険金が支払われます」
当時の収入に見合った高額の保険契約だったという見方
死亡した順番でいえば、まず1階浴室にいるBさんが殺害され、次に2階子供部屋でCくん、さらに1階居間でDちゃん、最後に海中に投棄されてAさんという順だった。つまり、最初のBさんの死によってAさんが保険金の受取人となり、続くCくんとDちゃんの死亡でも、Bさんはそれ以前に亡くなっているため、保険金はAさんに入るということになるのだが、Aさんはその後死亡したため、A家の法定相続人である親族の手に渡る。
そして最後に死亡したAさんについては、受取人の筆頭であるBさん、さらに続くCくんとDちゃんが、彼よりも前に死亡しており、これもまた法定相続人の親族に支払われるということだ。
当然ながら、高額な保険料であるため、その支払先に、捜査の重大な関心が向けられることになる。だが、そもそもこれらの保険契約に関しては、契約した時期が事件よりも数年前のことであり、さらにAさんにかけられた保険は、Aさん自身が保険会社で働く知人に依頼したものだった。
これらのことから、取材する我々にしても、かつて経営する焼肉店が繁盛していたAさんが、当時の収入に見合った高額の保険契約を行い、それが解約されずに残っていたもの、との見方をするようになる。