茨城県の大井川和彦知事をはじめ、副知事や部長級職員によるパワハラ疑惑が問題視されている。一連の報道に先がけて茨城県の問題を取材し、「心を病む職員たち」の現状を伝えてきたジャーナリストの小林美希氏による「ルポ・イバラキ」(月刊「地平」1月号)を紹介する。(全2回の1回目/後編に続く)

茨城県の大井川和彦知事。茨城県出身で県内屈指の進学校・水戸第一高等学校を卒業後、東京大学法学部を経て通産省(現経済産業省)に入省した ©時事通信社

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「兵庫県知事のパワハラ疑惑報道を見て、茨城県知事が職員に対して急に丁寧になったと聞いています」と、茨城県政に詳しい事情通が語る。

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 それには理由がある。約4年前の2020年9月、県議会では共産党の江尻加那県議が「大井川知事就任から2年、県庁職員の長期病休者のうち、精神性疾患(メンタル疾患)が初めて100人を超えていることは大変気がかりな事態です」と問題を指摘していたが、それ以降もメンタルヘルスを崩す県職員の数が一向に減らないからだ。

「ばか、死ね、出ていけ」――心を病む県職員たち

 茨城県では大井川和彦氏が知事になった2017年度以降、「心身の故障による休職」(30日以上の長期療養休暇)が増加している。県の「人事行政の運営等の状況」によれば、県の教育部門と警察部門を除いた一般部門の職員が「心身の故障」で休職した人数は、2017年度の168人から2023年度は272人へと約1.6倍に増えている。職員に占める休職者の率を計算すると、2.56%から4.09%に上昇している。

茨城県職員(一般部門)の「心身の故障」による休職状況

 この「心身の故障による休職」のうち「メンタル疾患」の内訳を県に尋ねると、2017年度の90人から18年度に106人に増加。19年度以降は115人前後の横ばい状態で2023年度も115人と減らないのだ。

 江尻県議によれば、2020年9月の議会で、知事によるパワハラとストレートには言及していないが、県職員幹部が大井川知事から「ばか、死ね、出ていけ」などの暴言を受けたという内部告発があったことで質疑におよび、その内容を重ねるように質疑していたという。