2019年の発表を振り返ると、日立市にある「かみね動物園」にパンダを誘致するとして「いばらきパンダ誘致推進協議会」を設立。「サメの水族館」として知られる大洗町のアクアワールド県大洗水族館に2022年度末からジンベエザメの展示をし、県の目玉事業にしようとした。実現すれば東日本初となるためマスコミは注目した。この年は知事の肝いりで「ひたちなか大洗リゾート構想」も策定されたものの、「言いっぱなしで進んでいない」(複数の議員)と、進捗状況は芳しくない。

 これらの施策に「根回しもなく突然、知事発表となる」「全国初と報道されることを狙っている印象で、尻ぬぐいをするのは職員」と関係者らがあきれ顔をするなか、教育分野でも突然の“改革”を断行して波紋を広げた。

大井川知事は「エリートを作る」と…

 大井川知事は「エリートを作る」として、2019年度から一部の県立進学高校に医学部コースを新設。特定の進学高校に附属中学を設ける「県立高等学校改革プラン」を公表し、20年度に県立の中高一貫校ができた。私立高校には県が指定する国立大学や偏差値が上位の難関大学と医学部に合格すると補助金を上乗せするという「エリート」養成の徹底ぶりだ。県立の進学高校は各校が学校目標として難関校や医学部への合格を掲げるようになり、「偏差値で見た大学合格やエリートを育てるのが教育なのか」と多くの教育者が疑問視している。

ADVERTISEMENT

 茨城県では教員のメンタル疾患も増加しており、2022年度の茨城県の公立学校の教員142人がうつ病などで休職、過去最多(文部科学省)となった。この背景には過労だけでなく、競争へと駆り立てる県政からのプレッシャーもあるのではないか。

 立憲民主党の玉造順一県議は、「大井川知事になってから実績主義が取り入れられるようになりました。『茨城県総合計画』では分野ごとに施策の数値目標が掲げられ、達成率が求められます。そうしたプレッシャーが職員のメンタル疾患の増加になって現れているのではないか」と見ている。先述の江尻県議も、「失敗を恐れず、といわれて負担が重くなるのは職員。各事業はもちろん、知事の方針とメンタル疾患の関係も検証すべきだ」と指摘している。

 後編では、大井川知事が「儲ける行政」や「金持ち、大企業、“優秀”な人」にこだわる背景を解説する。