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DX加速のニューノーマル時代に“半沢直樹的”日本組織が捨てるべきモノ《冨山和彦インタビュー》

冨山和彦インタビュー #2

2020/10/28
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正社員は「半沢直樹」さながらの不幸

――日本の大企業はその点が弱いのは、なぜでしょうか?

冨山 最大の理由は、組織の同質化です。古い体質の企業で、40歳以上の管理職を並べたら、9割以上は日本人のおじさんでしょう。学歴は似たりよったり、一括採用で入社して転職経験がない。考え方に多少の違いはあっても、仕事の経験や価値観はほぼ同じです。その正社員的空間で、『半沢直樹』さながらの派閥争いのような不幸なことをやっている。会社にとっても、従業員にとっても残念なことです。

 過去の工業モデルでは、同質化したほうがスムーズに仕事が進むので、きわめて効率的な組織でした。しかし全員が野球選手なので、「サッカーの試合に出ろ」といわれても急に戦えません。90年代初めにグローバル化の波とデジタル化の波が同時に押し寄せたときがそうでした。9割が日本人のおじさんでは、手も足も出ません。

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 ふたたびスポーツの例えになりますが、ちょうどグローバル化の波が日本企業に押し寄せていた1995年に開かれたラグビーのW杯で、日本チームはニュージーランドのオールブラックスに145対17で大敗しました。国内ではトップクラスの選手たちも、グローバル基準ではそれぐらい差があったのです。日本企業も似たような状況でした。

“同質化”を避けることで、2019W杯ラグビー日本大会で大活躍した日本代表 ©️文藝春秋

 日本のラグビーは、それから24年のあいだに大きく変わりました。日本代表は外国出身の選手が半数近くを占め、多様な選手が増えて、W杯で世界の強豪チームに勝つまでにレベルアップしました。グローバル基準に合わせれば、日本人だけの同質化したチームでは勝てなかったということです。