1ページ目から読む
2/2ページ目

不祥事の時よりも厳しい対応

 新型コロナウイルス陽性判明からたった1日で人事が発令されたことに加え、2日後付での異動という期日の短さにも、警視庁幹部の怒りが滲んでいる。別の警察関係者も、そのあまりに強硬な対応に目を丸くしていた。

「警視庁では普通、もっと深刻な不祥事であっても人事から異動までは1週間くらい空く。それが今回は2日後とは……。しかも、副署長は無事だったので署長が自宅待機でも業務自体はなんとか代行できる状態。あんなに急いで署長を飛ばして、新しい署長を配置する必要はなかった。今回の対応は完全に他の人への警告を狙ったものだと思う」

写真はイメージです ©iStock.com

 警視庁のトップである警視総監を含め、幹部たちもこの件には神経質になっていると警察内部では話題になっている。

ADVERTISEMENT

「警察署のトップである署長は署員を引き締めなければいけない立場なのに、その署長が率先して規律を破っては話にならない。署員への示しがつかない。『よりにもよって、署長のお前が行くなよ……』と、幹部は思っているはず。しかも署長が1人でコッソリ参加するならまだしも、課長たちを引き連れているわけで、言い訳の余地はない。最初の人事は署長だけだったけど、同行した課長たちも3月の内示で転勤になっておかしくない。署長の定年祝いだと誘われたら断りづらいのはわかるけど、さすがにこの状況では止めるべきだった」

「一瞬でスリーアウトだよ」

 警察は身内の不祥事に甘いと言われるが、今回は驚くほど対応が早く、厳しかった。その陰には、政治家の会食がバッシングにあっていることも影響しているという。大野元署長の件についても、発表直後から新聞やテレビはこぞって警察の意識の低さを非難した。

「批判は受けたが、元署長を少しでも守ろうとしていたらさらに大炎上していた。その意味では、本部の厳しい対応も当然だったと言える。警察は批判されることを極端に嫌うからね。今回の件だって、懇親会に参加していても感染さえしていなければバレなかったし、内々の注意で済んだ可能性がある。しかし署員を引き連れて大人数の懇親会に参加、2次会にまで行って感染したのではさすがにアウト。人数もダメ、2次会もダメ、感染したのはもっとダメ。一瞬でスリーアウトだよ」(同上)

尾久警察署 Ⓒ文藝春秋

 大野元署長が警務部付となった1月8日には、首都圏の1都3県での2回目の「緊急事態宣言」の発令が重なった。警視庁はその後、より厳しい内部通達を出している。飲酒を伴う会合は人数を問わず全て控えるよう求めたほか、飲酒を伴わない会合も、万全な感染対策を条件とした。

 事実上外食はすべて禁止という視線で警視庁は目を光らせている。人を取り締まるためにはまず自分たちから。厳しい時期はまだ続きそうだ。