イラスト 龍神貴之/加藤木麻莉

 森友学園の国有地売却を巡り、大きな注目を集めた「忖度(そんたく)」という言葉。しかし、アンケート調査を実施したところ52.2%の人が仕事上の判断を忖度で変えたことがある、と答えました。さらに、忖度の実情が次々と明らかに……。

 また、会社の不正を見つけた場合、5.7%の人がマスコミに内部告発すると回答。実際に経験した不正の内容も続々と寄せられました。

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「半沢直樹・花咲舞に教えて欲しい 働くあなたの意識調査」は、9月5日に発売となった池井戸潤さんの人気シリーズ最新巻『銀翼のイカロス 半沢直樹4』(文春文庫)と『花咲舞が黙ってない』(中公文庫)の主人公、半沢直樹と花咲舞がともに自分の正義感を貫いて仕事を成し遂げるタイプであることから、主に仕事上のコンプライアンスに焦点を当てて意識調査を行なったものです。

「仕事上の判断を『忖度(そんたく)』で変えたことがある?」「会社の不正を発見してしまった。部署ぐるみなので自分も巻き込まれそう。どうする?」「あなたの最も苦手な上司を人間以外の生き物に例えたら、どんなタイプ?」「仕事のグチ、誰に言う?」の4つの設問について、8月25日から9月21日にかけてインターネット上で募集し、30代~50代を中心に299件の回答を得ました。

「忖度(そんたく)」したことある人は52.2%

「忖度(そんたく)」が注目を集めたのは、森友学園の国有地売却で財務省が忖度をしたのではないか、という疑惑からでした。かなりネガティブなイメージで語られていますが、実際の仕事の現場ではどうなのでしょうか?

問 仕事上の判断を「忖度(そんたく)」で変えたことがある?
YES 52.2%
NO  47.8%

 なんと、過半数が「忖度」したことがありました。みんな、やってるじゃん! しかし、見方を変えるとYESとNOが拮抗している、とも言えます。寄せられた声を具体的に見て行きましょう。まずは、自治体・官公庁に関連した声を。

「今まで生きてきた中でそれだけはやってはいけないことだと思います。今でもそこのところは守りたいです」(自治体・官公庁 50代 男性)。

 こんな人ばかりだと頼もしいのですが、一方でこんな声もあります。

「クライアントがお役所なのでしょっちゅうです」(サービス業 50代 女性)

「普段から大なり小なり気遣いは必要です。忖度無しに渡ることが出来る仕事があるとは思えない」(自治体・官公庁 40代 男性)

 うーん、なかなかきれい事では行きませんね。YESの方の声をもう少し。

「あるデータを(思い出すと)捏造したことがあります」(IT関係 40代 男性)

「商社なので、機微のようなものが大切」(商社・卸売業 50代 男性)

「そりゃそうでしょ。バカでも、社長の息子にバカって言えませんもの」(教育 40代 女性)

©iStock.com

 NOの声としては、

「要請してくる人もいるが、一度受けると歯止めがなくなると思い、忖度しない」(不動産業 40代 女性)

「それをするとどうしても不正の走りになる」(運輸 50代 男性)

「忖度のバイアスは後で見ると不自然で滑稽で、評価に差し障るので敢えてしません」(サービス業 60代 男性)

 といった声がありました。

 また、

「ないと思っているけど、細かいところではあるのかも」(金融業 30代 女性)

 という声もありました。どこまでがグレーか分かりにくいのも、忖度の特徴かも知れませんね。 

 年齢が高くなるほど、忖度をした経験者が増える傾向にあるのは、ある意味当然でしょうか。長く生きていると、だんだん色んな事情を抱え込んでしまう?

 業界別では、自治体・官公庁の方で忖度したことがある人は40%と半数以下でした。金融業は59.3%と過半数。団体・組合等は70.0%。そして、81.3%とダントツの忖度経験率を記録した業界とは……出版・マスコミなのでした。言われてみれば……(以下、自粛)。

 次回は、「会社の不正を発見してしまった。部署ぐるみなので自分も巻き込まれそう。どうする?」という設問への回答をご紹介していきます。あなたなら、どうする?

(「社内の不正、マスコミに告発するは5.7% 不倫、使い込みなど世に不正の種は尽きまじ!」に続く)

<作品の紹介>

 

銀翼のイカロス』(池井戸潤/文春文庫)
定価:760円+税
2017年9月5日発売
倒産寸前の航空会社の再生を担当する半沢直樹。だが政府機関が莫大な負債の棒引きを要求してきた! 史上最大の危機が半沢を襲う最新作。
特設サイト http://books.bunshun.jp/sp/hanzawa

 

花咲舞が黙ってない』(池井戸潤/中公文庫)
定価:740円+税
2017年9月5日発売
メガバンク誕生前夜。生き残りを賭けた熾烈な合併交渉が進む中、自行の存続を揺るがしかねない大スキャンダルを知った花咲舞は――
特設サイト http://www.chuko.co.jp/special/hanasaki