広島・田中広輔内野手(31)と堂林翔太内野手(29)が、何度も頭から飛び込み泥に汚れる。見たことのない先輩の姿に、若ゴイの心はざわついていた。
沖縄春季キャンプ3日目のことだった。全体練習後の居残り特守に田中広と堂林が参加した。基礎練習を予定していたものの、河田ヘッドコーチが打球を左右に振り始めて様子が一変する。約30分間、主力2人が声を張り上げながらダイビングを繰り返した。
近年見られなかった光景に、田中広は「がむしゃらに追いかけていた若い頃の気持ちにもなった。もう一回貪欲になって僕がやることで若い子が感じてくれることもあると思う。レギュラーが率先してやりたいという気持ちはある」と胸の内を明かした。特守中のグラウンドでは、多くの若手が打撃練習に参加していた。選手会長の狙い通り、普段とは明らかに異なる活気に気付かない選手はいなかった。
田中広輔さんが!堂林さんが!泥だらけです。河田さんがノッカーとなっての居残り特守。こんなの見たことない!(河合 洋介) pic.twitter.com/vfDg9Zn9xk
— スポニチ カープじゃけぇ (@Sponichi_Carp) February 3, 2021
「見たことがなかったので驚きました」
その一人が高卒3年目にして自身初の1軍春季キャンプを勝ち取った羽月隆太郎内野手(20)である。
「春のキャンプに初めて参加させてもらってたくさん驚くことがあるけど、あの姿を見たときに“レギュラーの方でもユニホームを汚して特守をするのだな……”と思いました。声もあれだけ出されていた。見たことがなかったので驚きました」
羽月自身がユニホームを汚してアピールするはずだった。シーズン中の試合前練習でもがむしゃらに打球に飛びつくほどだ。昨季同様の初々しさを披露しようと意気揚々と1軍キャンプに向かうと、率先して声を出して打球を追いかけていたのは先輩の方だった。
「やっぱり凄いですよね……。レギュラーの方があれだけユニホームを汚してやっているということは、僕たちは倍以上やらないとレギュラーを取れない。そこを一番に感じました。もっともっと練習しないと勝てないのだな……って」
猛練習は、若手だけではなく主力にも分け隔てなく課されていることを知った。