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“功労者”が“裏切り者”と呼ばれる時……浅村栄斗と西武ファンが“不幸な関係”になってしまった理由

『プロ野球FA宣言の闇』#1

2020/10/29

 プロ野球でこうした違反行為がおこなわれていることは、しばしば耳にしていた。

 しかし、まさか突然自分の身に降りかかってくるとは、夢にも想像していなかった——。(『プロ野球 FA宣言の闇』(亜紀書房)より 全2回の1回目/後編へ続く)

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球団編成部スタッフからの電話

 パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)・ファイナルステージ、埼玉西武ライオンズ対福岡ソフトバンクホークスの頂上決戦が真っ只中の2019年10月某日。

 取材に出かける準備をしていると、スマホが鳴った。画面の着信表示を見ると、何度か飲みにいったことがある、某球団の編成部スタッフからだった。

 球場で顔を合わせることはときどきあるが、電話がかかってきたのは初めてのことだ。

 宮崎県で若手の育成を主目的に開催されているフェニックス・リーグを視察中だというその編成担当は、軽い近況報告を済ませると、本題に入った。2019年シーズン中にフリーエージェント(FA)権を獲得した西武の右腕投手、十亀剣(とがめけん)の去就について探ってきたのだ。

十亀 ©️文藝春秋

 私は西武の取材をよくおこなっているが、十亀とは球場で会った際に取材や挨拶をするくらいの間柄だ。まったくもって彼の胸の内を知るよしはない。

「ちょっと様子を見て、聞いてみてくれない?」

 いや、一つだけ知っていたことがある。

 梅雨が終わりを告げた頃、取得したばかりのFA権について十亀にたずねると、複数年契約を欲していた。あくまで一般論としての話だ。残留や移籍を見越しての答えではない。しかも取材時からすでに数カ月が経ち、もう心変わりしている可能性もある。この話はインターネット媒体のコラムにも書いており、編成担当にもそのまま伝えた。

「そうなんだね。複数年契約を欲しがっているのか」

中島大輔著
プロ野球FA宣言の闇

 編成担当はそう語ると、突如、電話越しに“条件提示”を始めた。

「うちに来れば●●●●万円くらいの年俸を出すことができる。インセンティブをつければ、今の年俸より条件もよくなるはずだ。起用法としては先発として考えている。うちでは先発の五、六番手を争う扱いになると思うけど、一年間ローテーションで回ってほしい。悪くない話だと思うんだよな。ちょっと様子を見て、十亀にこんな話があると聞いてみてくれない?」

 最初の世間話と同じトーンで“条件提示”してきたことで、この編成担当にとって、同様のやりとりは日常茶飯事なのだと想像できた。