10月2日深夜からテレビ東京でアニメ『おそ松さん』の第2シリーズの放送が始まっている。その第1シリーズがスタートしたのは、一昨年のきょう、2015年10月6日のこと。第1回では、さまざまなアニメやマンガのパロディと思われるネタがこれでもかと盛り込まれていた。しかもこの回は、放送後にリリースが予定されていたDVD・ブルーレイには収録されないと告知されたこともあいまって、話題を呼んだ。
『おそ松さん』の原作は言うまでもなく、昭和を代表するギャグマンガ、赤塚不二夫の『おそ松くん』である。おそ松・カラ松・チョロ松・一松・十四松・トド松の6つ子を主人公とするこのマンガは、6つ子の区別がつかないことで笑いをとった。それに対し、『おそ松さん』では、大人になった6つ子が全員ニートになっているという設定で、それぞれに異なる個性を与えるという大胆な翻案が試みられた。監督の藤田陽一は、『おそ松さん』をつくるにあたり、「ノスタルジーに陥ることだけはやめよう」とスタッフに話していたという(『MdN』2016年4月号)。赤塚マンガはもともと「ナンセンス」や「破壊」を真髄としていただけに、それを復活させるにあたって、破壊しない手はないというのがその理由だ。
しかし放送が始まると、スタッフも予想していなかったことが起こる。6つ子にそれぞれ人気声優を当てたこともあってか、若い女性を中心に、一人のキャラを推したり、6つ子のなかからカップリングを考えたりといった楽しみ方をするファンが現れたのだ。アニメやマンガの世界では、過去の名作のリメイクが流行っているが、『おそ松さん』のように、それまで原作とまったく縁のなかったような新規のファンが多数ついたケースは珍しいのではないか。
新シリーズの第1回では、6つ子たちが殺到する女性ファン相手に商売し、莫大な富を得たために、ますますダメになるという描写があった。初回からいきなりブームそのものをパロディにしてしまった『おそ松さん』は、これからどんなふうに展開していくのか。今回のシリーズも目が離せない。