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モーニング娘。を変えた“3年半のもがき”…高橋愛率いる「プラチナ期」が伝説と呼ばれるワケ

モーニング娘。を変えた“3年半のもがき”…高橋愛率いる「プラチナ期」が伝説と呼ばれるワケ

2021/02/19
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「また一人ぼっちマリコ」(「泣いちゃうかも」)。マママリコ! 濃厚な歌謡臭が鼻の奥を刺激する。この部分を担当する道重さゆみの少しばかりしゃくれた歌い方もいい!

「何も知らないあなたの洋服にアイロンしてる手に涙が落ちてゆく」(しょうがない夢追い人)。うおおアイロン! 「テレビを買い替えないといけないね」(なんちゃって恋愛)。ひいいテレビ!と、出てくるアイテム一つ一つに叫び悶えながら、私はこの3曲を繰り返し聞いた。そのたび、錆びれていた「乙女の琴線」が急にぶるんぶるんと刺激され、心の筋肉痛まで起こった。いまだに聴くと胸が痛くなる。ああ後遺症! 乙女心を忘れそうになるたび「しっかりなさい!」とムチ打ってくるスパルタ教師のようである。

【動画】「なんちゃって恋愛」MV
 

なぜ「プラチナ期」は伝説になったのか?

 プラチナ期に話を戻そう。プラチナ期は2007年6月から、9期メンバーが加入する2011年1月までを指し、楽曲で言えば34th「女に幸あれ」から44th「女と男のララバイゲーム」までである。メンバーは、高橋愛・新垣里沙・田中れいな・亀井絵里・道重さゆみ・光井愛佳・ジュンジュン・リンリン・久住小春。「泣いちゃうかも」が発売されていた2009年は露出が減り、模索トンネルのど真ん中。「プラチナ期」と名付けられ伝説化したのは、メンバーが卒業してからだ。このプロセスは長いモー娘。の歴史の中でも珍しい。

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 また、歌割も特徴的だった。それまでは、メンバー全員がセンターになる可能性がある「下克上システム」。だったのが、高橋愛がリーダーになってから、かなり役割分担がはっきりした。高橋・田中がメインを歌い、2番サビが新垣・亀井、シャウトに道重・久住、コーラスが光井、ジュンジュン、リンリンといったイメージ。

 歌割が極端に偏っていたので賛否両論もあったが、私は全員が役割を全うする職人的な感じが好きだった。

光井愛佳 ©getty

 特に印象に残っているのが、ほぼ前に出ること無く、ソロパートもかなり少なかった、ジュンジュン、リンリン、光井愛佳。シングルのパフォーマンスでは、端に彼女たちがいる安定感というか、「グループ」を強く理解している人が放つ独特の華があった。

 アルバムではソロ曲やユニット曲があり、モー娘。9枚目のオリジナルアルバム「プラチナ9DISC」(2009年)に収録されている光井のソロ「私の魅力に気付かない鈍感な人」は特に名曲。後列を全うした光井自身の在り方、地上波でなかなかアピールできなかったプラチナ期、さらにはグループの人数がどんどん増えていった平成アイドルたちの声を、そのまま恋心に置き換えたような、エモーショナルな一曲である。