1ページ目から読む
2/3ページ目

新たなフェーズに入った池脇千鶴

 新と「OLD JACK&ROSE」の初代ママ・ジルバを演じる池脇千鶴は、9年ぶりのドラマ主演となる。近年は映画での活躍が多く、母親役なども演じているが、真っ先に思い浮かぶのは純粋無垢な少女の姿だ。

 幼少期から活躍する役者が「いつまでも子どものイメージが抜けない」と話すのをたびたび聞くが、池脇もまた“少女性”が強い役者の一人ではないだろうか。前回出演した2017年のドラマ『ごめん、愛してる』でも母親役を演じたが、事故の後遺症で7歳程度の知能しかなく、子どものまま大人になったような難しい役どころだった。

池脇千鶴 ©AFLO

 テレビドラマで見てきた“少女性”とは対極の位置にある作品だが、これまで彼女の芝居を見てきた世代にこそ、新の「シジューになった……」は痛烈に響く。さらには原作漫画とはひと味違う物悲しさや切なさがドラマ版の新には漂っている。新たなフェーズに入った池脇千鶴の代表作としても、『ジルバ』は視聴者の心に刻まれることだろう。

ADVERTISEMENT

 そして忘れてはならないのが、「OLD JACK&ROSE」の看板を担う重鎮たち。ドラマ版では、人生のロールモデルにしたくなるような熟練のキャストを揃えた。草笛光子、中田喜子、久本雅美、中尾ミエ、品川徹――最近では“かわいらしいおばあちゃん”役が多くなった草村礼子の起用も効いている。

 パワフルなのは劇中だけではなく、くじらママ役の草笛光子(87)は、今も週一のパーソナルトレーニングを欠かさないという。年齢を感じさせない佇まいながらも、今まで歩んできた道筋が滲みでる芝居はまさに圧巻だ。

左からナマコ(久本雅美・62)、ひなぎく(草村礼子・80)、エリー(中田喜子・67) (「その女、ジルバ」公式サイトより)

ヒロイン新は「周りにも“与える”存在」へ

 新の一番の成長ポイントを挙げるのならば、先輩からの教えを享受するだけではなく、周りにも“与える”存在になったことだろう。呪いに捕らわれていた新が、いつしか「シジューなんてまだまだ若い」と笑うようになり、さらには他人を縛りつけていた呪いを緩める場面が第5話にある。

 前向きに働くようになっても倉庫での待遇は1ミリも上がらないのだが、同い年のみか(真飛聖)やスミレ(江口のりこ)との仲は深まっていった。しかし、社内のリストラ計画が進行し、パワハラ疑惑が浮上したスミレに白羽の矢が立つ。最終的にスミレはリストラを免れるのだが、以前から身の振り方を考えていたみかは、今回の騒動を機に退職を決意する。