「10代は若くていいよね、22歳なんてオバサンだからさぁ」と耳へ飛び込んできた会話に、22歳をとうに過ぎた私は、ため息をつきたくなることがある。

 22歳でオバサンならば、その先を生きる我々は果たして何になるのかと。でも思い返してみれば、22歳の私も当時は似たようなことを考えていた。卑屈になっている今の私を見て、同じようにため息をつく人もいるのかもしれない。

 こんなときに思い出すのが、2016年のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』に登場する百合ちゃん(石田ゆり子)だ。若さを武器に噛みついてきた五十嵐さん(内田理央)に対し、一人の先輩として、願いを託すように言葉をつむぐ。

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「自分に呪いをかけないで」

「そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」

「アンチエイジングにお金を出しても、老いを買う人はいない」と笑っていた五十嵐さんのように、若さに価値を見出している女性はこの世にごまんといる。自分の価値が年々下がっていくように感じる人もいるだろう。2021年の冬ドラマ『その女、ジルバ』の主人公も“恐ろしい呪い”に捕らわれていた女性の一人だ。

「その女、ジルバ」(東海テレビ・フジテレビ系) (公式サイトより)

合言葉は「女はシジュー(40)から!」

 “姥捨て”と揶揄される物流センターの倉庫で働く新(池脇千鶴)は、40歳の誕生日当日に、平均年齢70歳の熟女バー「OLD JACK&ROSE」を見つける。「今ここで新しいなにかをしないと、私は私の人生を嫌いになっちゃう」と覚悟を決めた新は、新米ホステス“アララ”としてバイトを始めることに。エネルギッシュな先輩ホステスやダンディなマスター、陽気な常連客たちと過ごす中で、なにかとネガティブ思考だった新が少しずつ前向きになっていく。

「その女、ジルバ」でリアル40代を演じる池脇千鶴(「その女、ジルバ」公式サイトより)

「女はシジュー(40)から!」を合言葉にしているが、「女は60からって言ってなかった?」「70からよねぇ?」「あら、80からよ!」の掛け合いにもあるように、今を生きるすべての人を肯定するストーリーだ。

 東海テレビ制作の「オトナの土ドラ」(土曜日23:40~)といえば、深夜帯らしい刺激的でエキセントリックな作品が目立つ。ストレートな人間ドラマはわりと珍しく、プライム帯にも迫る視聴率6.3%で幕開けした『その女、ジルバ』は、まさに今期のダークホースといえよう。唯一無二のドラマへと押し上げたのは、物語を彩る実力派のキャストたちだ。