東京新聞・望月記者の「追及」が生まれた理由
これまで「鉄壁のガースー」と呼ばれてきた菅氏が、会見を早く切り上げたい心情はわかる。
「全く問題ない」「指摘は全くあたらない」――。そうして記者の質問を一刀両断する菅氏の答弁スタイルが、安倍首相の友人が理事長を務める加計学園の獣医学部新設問題をきっかけに通用しなくなったからだ。
今年5月、「総理のご意向」と書かれた文部科学省作成の文書が報道で明るみに出た当初、菅氏は「怪文書みたいな文書」といって一蹴しようとした。ところが、前川喜平・前文科事務次官が文書の存在を証言。菅氏は前川氏に対し、「地位に恋々」と政府の会見では異例の個人攻撃まで行い、火消しに走ったが、前川氏に続いて現職官僚の証言も相次いだ。政府見解の信用性が揺らぐなか、東京新聞社会部で加計問題の取材を進めてきた望月衣塑子記者が長官会見に参戦し、1日に23問の質問を重ね、政府は文書の再調査に追い込まれる。
それを契機に、森友・加計問題に限らず、「安倍1強」で起きている様々な問題への質疑が望月記者を中心に活発に行われるようになり、菅氏が連日のように矢面に立たされることになったのだ。
こうした追及が長官会見に集中する背景には、首相に対する日常的な取材の場がなくなったこともある。
「私がごちそうすることもあるし、先方が持つ場合もある」
安倍首相は7月24日の衆院予算委員会で、加計学園理事長との食事代についてこう説明した。首相は自身が議長を務める会議で獣医学部新設に道を開いた昨年後半に会食を重ねており、関係業者からの供応接待を禁じた大臣規範に反する可能性が生じる答弁だ。日々のぶら下がり取材があれば、鳩山由紀夫元首相が母親からの多額の資金提供の問題で追及を受けたように、費用負担の詳細が連日問われただろう。しかし、菅直人内閣だった2011年、東日本大震災への対応を理由に中止され、安倍内閣もそれを踏襲した。官邸への取材機会が狭まる中、長官会見にまで事実上の時間制限が設けられようとしているのだ。