9月最後の金曜日、TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』に出演した。スポーツ報知の加藤弘士デスク、フリーアナウンサーの白井京子さん、そして文春野球コラム・ヤクルト担当の長谷川晶一さんとご一緒したのだ。常連メンバーの村瀬秀信コミッショナーは出先のため電話出演のみだった。

 で、もちろん圧倒的な存在感を発揮したのが長谷川晶一さんだった。今シーズンの長谷川さんの壊れっぷりというか、元々壊れていたけどそれをカムアウトしたというか、その狂気を孕(はら)んだ妄想力に僕は舌を巻いている。真面目なノンフィクション作家だとばっかり思っていたのだ。それが「由規の1勝は10勝分の価値がある」(として10勝とカウント、既に今季「20勝」を達成している!)とか「成瀬善久の場合、4本打たれて《被本塁打1》とする」等、子どもじみたマイルールを設定、フェイクと現実逃避のかぎりを尽くす、惚れ惚れするようなアレな人だった。

 今回の出演では、あと1敗に迫った「シーズン95敗」の球団最多敗記録(放送時点ではまだ到達前だった)に触れ、「いくら借金があってもあと3試合ガマンすれば徳政令が公布されて、来季はまたゼロからやれる」「もしかすると過払い金があるかもしれない。ゼロじゃなくて10勝くらい戻されて開幕できるかもしれない」と言いつのった。

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「お別れ出場」がある2軍の最終カード

鎌ヶ谷スタジアム ©えのきどいちろう

 そのとき、長谷川さんと2軍戦の話をした。実は当日13時プレーボールの「日ハム×ヤクルト」(鎌スタ)を見に行ったのだ。いよいよイースタンリーグもこの週末で全日程終了というタイミングだった。ヤクルト3連戦は今季最後の鎌ヶ谷シリーズだ。僕は可能な限り、秋の最終カードは見に行くようにしている。もしかすると今季で戦力外になる選手が「お別れ出場」をするかもしれない。ある年は最終戦が終わった後、何人かのベテラン選手が胴上げされて、「え、そういうことなのか!」と驚いたものだ。もちろん見に行くのは最終戦がいいんだけど、都合がつかなければ今年のように「3連戦の初戦」でも構わない。自分なりのスジの通し方だ。うちのユニホームを着てくれた選手を最後まで大切にしたい。

「見に行ったんですけど、ひどい目に遭いましたよ。徳山武陽に3安打完封食らいました。もう、ぜんぜん何もできなかった」
「3安打で牽制死が1、併殺打が2でしたね」
「おお長谷川さん、ちゃんと情報チェックしてる! そんなの何も起こりようがないでしょ」
「ま、そうですね。でもそうか、それ、オレが見に行ってたらヤクルト勝つのが見られましたね」
「そうそう、何で僕が見てるんだと思いました。雄平が出てたし、鵜久森も途中から出てきて3打席見られました。あと飯原が見られた」

 イースタンリーグ「日ハム×ヤクルト」18回戦は、以上のやりとりでアウトラインは出尽くしている。ヤクルト徳山は昨年11月、黄色じん帯骨化症(厚生労働省から難病指定されている。同じ病いから復帰したソフトバンクの大隣憲司が親身になって助言してくれたと聞く)の手術を受けた。2軍戦のマウンドに戻っただけでも大したものなのに3安打完封だ。10奪三振だ。僕はリハビリの日々を思った。今、見ているナイスピッチングは、そこに至るまでの懸命なプロセスがあってのものだ。

 ファイターズ打線で注目したのは2番高濱祐仁(DH)、3番淺間大基(中)の横浜高校コンビだ。期待の3年目が終わってしまう。高濱は9月、1軍で使ってもらったが、何もできないまま下に落とされた。見逃し三振は印象が最悪だ。淺間は(陽岱鋼の移籍で)外野のポジションを狙う好機だったが、腰痛で争いにも加われなかった。先日のオリックス・宗佑磨(同学年。横浜隼人出身)の初ヒットをどんな気持ちで見つめただろう。ちなみにこの日は2人ともノーヒットだった。