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官邸で“令和の2・26事件”勃発! 「不思議な口癖」で分かった菅首相の答弁能力は国難じゃないでしょうか

「いら立ちを抑えながら反論する場合に用いられる言い回し」

2021/03/09
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乱発される「~じゃないでしょうか」の意味

 さて今回の2・26事件でわかったことがある。菅首相の不思議な口癖だ。

「~じゃないでしょうか」という言い回しを乱発するのである。

・山田広報官のことは全く関係ありません。現に昨日、国会で答弁されてきたことも事実じゃないでしょうか。

 

・今日こうして、「ぶら下がり」会見やってるんじゃないでしょうか。

 

・必要なことには答えてるんじゃないでしょうか。

 このことについて上西充子・法政大教授は「言い回しを確認したところ、13回もあった」として「なぜ自分が責任をもって、はっきりと言い切らないのだろうか」と指摘。さらに「これは、いら立ちを抑えながら反論する場合に用いられる言い回しではないだろうか」と考察している。(『ハーバー・ビジネス・オンライン』3月1日)

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菅首相の答弁能力は国難「ではないでしょうか」

 言い切らないが相手に押し付ける話法。そういえばあの時も使っていた。

「5000円でできないことはないんじゃないでしょうか」(2019年11月14日・官房長官会見)

 安倍前首相の桜を見る会前夜祭の「会費5000円」疑惑に対しての菅氏のコメントである。そのあと安倍事務所が補填していたことが判明した。やはり5000円ではできなかったのだ。

安倍晋三元首相 ©️文藝春秋

 このことから考えると政治家・菅義偉の「~じゃないでしょうか」は何かマズいときや窮地に追い込まれたときに出るようだ。

 では2・26をもう一度振り返ってみよう。これまで鉄壁のセコンドに囲まれていた菅首相が、うっかり丸腰で記者に囲まれたら叫んでいた。「じゃないでしょうか」「じゃないでしょうか」「じゃないでしょうか」と13回も。しみじみしてしまう。

 私が心配するのはこの話法は国内なら通じても、国益を争う場では他国のリーダーに通用しないであろうことだ。菅首相の答弁能力は国難ではないでしょうか。

「同じような質問ばっかり」と首相は言うが、同じようなことをして、同じようなごまかし方をずっとしてるからではないでしょうか。 

「テレビニュース」(平野次郎・主婦の友社)という本にはアメリカ大統領の記者会見についてこんなくだりがある。

《「なりたくてなった公人には、どのような質問をぶつけてもかまわない」と多くのジャーナリストたちが考えている。双方にとって真剣勝負の場である。》

「テレビニュース」(平野次郎・主婦の友社)より

  約30年前の本である。菅首相はなりたくて公人になり、なりたくて首相になった。「同じような質問ばっかり」とキレる立場ではないはずだ。