「お経を唱えてくれないのか!」
もちろん、格安“葬儀”の価格競争で消費者の選択肢が増えたのは事実だ。しかし安さを強調するあまり、ボタンの掛け違いで起こる不幸なこともある。
「なるべく安く」という強い希望で、通夜と葬儀をしない「直葬」を選んだのに、後から「花を多く」「お経を唱えてくれないの?」などと、予算のかかる要望を出して、板挟みになる担当者もいたりする。葬儀社への悪いイメージが先行し、最初から“戦闘モード”に入ってしまい「自分の決めた以上の金額は出さない(もちろん格安サイトの料金プラン)」と言い張って話が進まない…という話を同業者が教えてくれたこともある。こうなってしまっては、消費者も葬儀社のどちらも良いことがない。
本当のプロの見つけ方
それを防ぐには、葬儀社への事前相談が理想だ。年老いた家族が元気でも、見積もりをしてもらい、担当者を観察して応対を観察する。食事やお布施の話も含めて、葬儀費用の総額を教えてくれるのであれば、まず信頼できる。複数の葬儀社の見積もりを取って比較するのもいいだろう。大切なのは価格だけをみないこと。本当に安いかは、葬儀をやってみて初めて分かることで、担当者を「信頼できるか」を見てほしい。
ネットの情報も「口コミの1つ」ぐらいに、緩やかに捉えることが大切だ。そのためには、自分の目と耳で確かめて、最終判断をする…という当たり前のことをすればいい。葬儀は地域差が大きい。かかりつけの医者と同じく、いざというときに備えて、先に葬儀社を決めておくのが最大の安全策なのである。高額商品の購入時は下調べと検討を重ねるのに、葬儀はネット検索で決めるべきなのか、考えてほしいところだ。
そもそも本当のプロは、自分の仕事に誇りを持っている。技術や知識を安売りしないし、依頼者の要望に応じるのはもちろん、時には依頼者すら気付かない真意をくみ取って提案もする。予算に限界があればその範囲で全力を尽くし、「当家のため」と思えば嫌がられるのを覚悟でやんわりと苦言もする。それがプロとしての仕事だからだ。
この記事を見た人が、そんな大切な人の最後を託せるプロを見つけて欲しいと切に願う。
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まさに過渡期にある現代の葬儀事情――そんな葬儀の世界の裏側が描かれる漫画『それでもしますか、お葬式?』(集英社)の1巻が1月19日に発売になりました。未読の方はぜひ、一読してみてください。