高齢化社会が進行する中で、「弔われる人」の数が年々増加する現代日本。内閣府の高齢社会白書(平成29年版)でも死者数は右肩上がりの予想だ。昨今、ネットでは「低価格」がアピールされ、テレビCMも流れるなど、葬儀業界が劇的に変わりつつある。業界関係者の視点から現状をお伝えする。
「どうしてあんなに高いのか」お葬式のモヤモヤ
葬儀の当事者(喪主)になることは、人生でそう何度もあるわけではない。身内が亡くなってから慌て、考える間もなく葬儀が終わってしまい、後日冷静に振り返ると「どうしてあんなに高いのか」とモヤモヤする。そしてネットで葬儀が10万円前後でできることを目にすると、「葬儀社にだまされたのでは…」と思う。「格安葬儀」が登場したことで、そうした経験をする人は近年増えているだろう。
ただし、安いのには理由がある。ネットでうたう「格安」には、10万円では普通の葬儀が難しいことが巧みにぼかされているのだ。
お葬式のお金は4つのことで成り立っている
そもそも葬儀の費用は、次の4つから成り立つ。まず祭壇(荘厳壇)を設けて通夜・葬儀を行う「葬祭費」、お寺への「お布施」、火葬場などでの「食事代」、そして「火葬場の使用料」だ。そして、格安価格をアピールするサイトの費用内訳をよく見ると、勘定されているのは4つのうちの「葬祭費」のみで、お布施、食事代、火葬場の使用料は除外しているのが普通である。
その価格を、えてして規模の大きな葬儀が多かった“一昔前”の費用を使って比較し「安い」とうたう。スタンダードな進行であれば、通夜、葬儀を経て火葬場へ行く流れだが、通夜も葬儀も省いて火葬場だけで見送るようにするなど、削るだけ削り徹底的に手間を省いているからこその価格であり、その安さだけを喧伝することは、いわば「長所」のみを強調しているにすぎない。ウソを言っているわけではないが、果たしてそれがフェアかは、判断の分かれるところだ。