「文春オンライン」編集部では、新型コロナウイルス感染拡大を受け、読者に「一斉休校・コロナ休校」についての体験談を募った。
新型コロナウイルスでは学校の休校やイベントの自粛ばかりが注目されがちだ。しかし、なかには意外な職業の人もコロナ自粛で生活を脅かされている。関西地方でお寺を営む住職のクロノクルさん(仮名、47歳男性)もそのひとり。知られざるお寺の苦境を現役住職が打ち明ける。(取材・文=曽我部健/清談社)
◆◆◆
檀家さんから相次ぐ法事・法要のキャンセル
コロナウイルスによって、住職である私の生活も一変した。関西地方にある小さなお寺のため、もともと檀家さんの数が少なく、食うや食わずの慎ましい生活を送っていたが、コロナの流行とともにその少ない収入も絶たれた。
感染拡大を理由に、このところ檀家さんからお参りのキャンセルが相次いでいるからだ。3月18日現在、今月の御布施の総額はわずか1万円余りしかない。
ただでさえ政府が国民に不要不急の外出を控えるように要請している折、ウイルスの感染が怖い、法事を自粛すると言われたら、無理にすすめることはできない。そもそも、お経を唱えるときはマスクを着けるわけにいかず、声も大きくなりがちなので飛沫が飛ぶ。それをリスクと捉えられると、「そういう事情なら仕方ありませんね」と返すほかない。
結果として、私のお寺では3月の前半2週間だけで5〜6件のお参りがなくなった。小さなお寺にとって、これは死活問題。それぐらい現在のお寺の経済状況は厳しい。
坊主丸儲けという言葉があるように、世間には「お坊さん=お金を儲けている」とのイメージを持つ人が多い。たしかに、なかには高級車を乗り回したり、夜の街で遊んだりする住職もいる。
しかし、実際に儲けているのは宗派の本山や人口の多い地域の大きなお寺など、ほんのひと握り。お寺の世界にも勝ち組と負け組がいる。負け組の小さなお寺、それも私のように、家庭の事情で兼業から専業に切り替えた小さなお寺の住職の場合、その収入は日本人の平均年収にも遠く及ばないのが実情だ。