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ひと月の収入は平均10万円台だったが……

 一般的なお寺の場合、収入の中心は月命日の月忌参りで、これが一般の会社員の基本給にあたる。年忌は、一周忌、三回忌、七回忌などと、毎年あるわけではない。

 私のお寺は、月忌参りがなく、祥月参り(亡くなった方の年1回の命日参り)と年忌法要のみ行っている。このため、ひと月の収入は平均すると10万円台だ。ここにお葬式が加わることで、なんとか生活を維持している。

 ただ、人がいつ亡くなるかは誰にもわからないので、お葬式は月の収入として計算に入れられない。月忌が基本給なら、お葬式は特別手当のようなものだ。

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 私のお寺は今年に入ってからお葬式がなかった。そこへ運悪くコロナの流行によるイベントの自粛が重なったことで、収入がほとんどなくなってしまったのだ。

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社会に危機が訪れると、法事は真っ先にカットされる

 問題は、法事の自粛が一時的なものでは終わらない可能性が高いことだ。

 コロナの流行もいつかは終息する。しかし、その後に法事を再開する檀家さんは非常に少ないだろう。社会に何か大きな危機が起きて法事を一旦やめると、多くはそのままになる。事実、阪神淡路大震災のときがそうだったし、先代の住職に聞いた話ではバブル崩壊の後も同じだったという。

 近年は全国的に法事の簡素化が進み、お葬式も直葬が増えている。多くの人にとって、なるべく仏事にお金をかけない、かけたくないというのが正直な気持ちなのだ。生産性があるわけではなく、生活に直結するものでもないので、法事の費用は支出を抑えたいときに真っ先にカットされてしまう。

 それでも、私のお寺が所属する宗派の本山は、法事のキャンセルが続きお寺の経済状況が厳しいからといって“上納金”を免除してくれたりはしない。これは本山や教区(本山の出先機関)から徴収される賦課金のことで、一種の税金でありフランチャイズ料のようなもの。その金額は年間40万円に及ぶ。

 人口減少時代に突入し、過疎化で檀家が減ったにも関わらず、本山による賦課金の見直しなどもない。これだけ生活が苦しいのに、本山に納めるお金もプールしておかなければならないのだ。