今年の高校球界の“ビッグ4”
選抜開幕の2週前、対外試合が解禁されて最初の練習試合に足を運ぶと、関戸は2番手として登板。捕手のミットが届かない、バックネットに突き刺さるような暴投も2度あったが、カーブ、スライダーといった変化球が鋭く決まり、結果として5イニングを0点に抑えた。高校入学後の球速はMAX154キロに伸びているが、この日も150キロをスカウトのスピードガンは表示していた。同校の西谷監督は、とりわけ期待の大きい選手には「大きく育って欲しい」という言葉を使う。今年のチームでいえば関戸がその対象のひとりだ。
「みなさんは球速のことばり気になさりますが、私は興味がないので、しっかりと勝てるピッチャーになってもらいたい。彼の場合、どうしても出力が高いので、ボールは暴れる。ただ、私が打者ならそれはそれで嫌ですね。関戸のひとつの持ち味だと思っています」
関戸は同じ大阪桐蔭の大型左腕・松浦慶斗、市立和歌山の152キロ右腕・小園健太、中京大中京(愛知)のエース右腕・畔柳亨丞と共に、今年の高校球界の“ビッグ4”とも、“四天王”とも呼ばれる。だが、関戸は昨秋の大阪大会、近畿大会ではケガの影響で目立った活躍ができず、4人の中で公式戦実績は誰よりも乏しい。179センチ81キロという大柄とはいえない体躯に内蔵するエンジンの大きさだけで将来性が期待されてきた投手といえる。
「未知の世界に進んで行くというのは自信の表れ」
いつだったか、NPBからのメジャーリーグ(MLB)挑戦がタブー視されていた時代に海を渡った野茂英雄に憧れているという話を関戸から聞いた。
「パイオニア的な姿勢がすごい。未知の世界に進んで行くというのは自信の表れですよね」
今年の選抜に臨む大阪桐蔭では松浦がエースを担う。「10」を背負う関戸は「マウンドに上がればエースの気持ちで投げます」と話す。自らがもっとも成長できる居場所を求めて旅するジャーニーマンは、道半ばながらこの春、初めて甲子園のマウンドに立つ。