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なぜ、そんなに努力をするのか

「努力は人を裏切らない」

 英雄と言われる男がプロ入りして以来、心に刻んでいた言葉は意外と言っていいほど、泥臭くシンプルだった。韓国でプレーしていた時に指導者からもらった言葉を日本に来てからも、ずっと大切にしていた。ホームランを打った試合の後もバットを振る姿を何度も目撃した。試合直前でも納得するまで振っていた。敵投手のデータには細かく目を通し自分のフォーム動画を日夜、チェックし徹底的に自分の状態を把握していた。あまりにもストイックな姿に「なぜ、そんなに努力をするのか? その先にあるものとはいったい、何なのか?」と聞いたことがある。するとニコリと笑って言い放った言葉がなんともカッコよく、今でも私の心に残っている。

「みんなの笑っている顔がみたい。そして自分も大笑いしたい」

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 マリーンズではスンちゃんのあだ名で親しまれた李承燁は本物のスーパースターだった。誰からも慕われ、愛され、尊敬される男だった。10月3日の引退試合でも第1打席と第2打席で、ともに右翼席に連続本塁打を放つなど、韓国のスーパースターとして最後まで輝きを放ち、ユニフォームを脱いだ。きっと最後の最後まで努力をし、スタンドのファンの最高の笑顔を見たいという想いでバットを振ったのだと思う。そんな選手と同じ年の同じ日に生まれ、05年は一緒に日本一まで登りつめ、喜びを分かち合えたことは私にとっての誇りだ。スンちゃん、お疲れ様でした! そして、色々と笑顔を届けてくれてありがとう。

李承燁、高橋純一氏とのスリーショット ©梶原紀章

梶原紀章(千葉ロッテマリーンズ広報担当)

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