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加えて体調面も万全ではないように見えた。フリーの演技を控えてリンクサイドに座った羽生は、テレビの画面越しでも汗をかいていることがはっきり分かった。何か不調を抱えているのだろうかと思っていたら、大会後にぜんそくの発作が出ていたという報道が出て納得した。
そして結果は3位。優勝はおろか、日本勢でも2番手に甘んじた。羽生の性格を考えれば悔しがっても不思議ではないが、大会後の様子は意外に冷静で、前向きな雰囲気さえ感じられた。
言い訳をするでもなく、結果を受け止めて今後の課題にも言及した。喘息の話も自分からしたわけではなく、メディアの質問に答える形で控えめに話しただけだ。
羽生を「絶対王者」だと思っているのは誰か
しかし、羽生に対して厳しい視線を向ける人たちが想像以上に多く現れたので驚いた。
「いやあ、またネイサンに負けましたね。この先も厳しいですね。本人も悔しいでしょうね。負けたって認めたくないでしょうね」
フィギュアスケートもある程度見るスポーツ記者からは、そんな連絡が来た。「惨敗」という見出しの記事も散見された。冷静な本人と、敗戦を大きく扱うファンやメディア。その差はおそらく、羽生の現状に対する認識のギャップからくるものだ。
平昌オリンピックで2大会連続金メダルを取ったあとに、羽生は「自分は絶対王者じゃない」という意味の発言をしたことがある。
オリンピック2連覇こそしたものの、羽生はずっと世界のトップだったわけではない。2015年と2016年には、カナダで一緒に練習していたハビエル・フェルナンデス(スペイン)に世界選手権で2年連続で敗れている。