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 グランプリシリーズのカナダ大会で優勝したのも、4度目の出場だった2019年が初めてだ。ソチオリンピックで金メダルを取った2014年以降、羽生が「絶対王者」だった時期などないのだ。羽生のコアなファンやずっと追いかけている記者はそれを分かっている。しかし一般的な認識としては、羽生には2014年以降「絶対王者」という看板がついて回った。だからこそ優勝を逃したことがニュースになり、日本人選手に負ければ「衰えた」と騒がれるのだ。

ソチ五輪で金メダルを獲得 ©JMPA

 とりわけネイサン・チェンについては、羽生自身が何度もその強さを認める発言をしてきた。自分が万全の状態で、やっと互角の勝負ができる相手。そんな拮抗した力関係であることを本人は承知している。

 しかし「絶対王者」のイメージに引っ張られれば、「ネイサン・チェンにまた負けたのか。羽生も終わりだな」という感想を持つ人も出てくる。

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 羽生にアンチがいるのは事実だ。逆に、勝ってほしい、優勝してほしいと期待するからこそ敗戦に落胆する人もいるのだろう。どちらにせよ、彼らの認識は本人のそれとはずれていると言わざるをえない。

そもそも、なぜ世界選手権に?

 そもそも今シーズンの羽生の発言を振り返れば、世界選手権に出場しない可能性さえあった。グランプリシリーズ欠場を発表したのも、持病を抱える体調と無関係ではなかっただろう。

国民栄誉賞授与式での羽生結弦 ©文藝春秋

 それでも羽生が世界選手権に出場したのは、この大会の成績で2022年の北京オリンピックの日本の出場枠が決まることも大きかったのではないか。日本のエースという責任を感じていた可能性はある。

 そして実際、日本は2位の鍵山と3位の羽生とで、オリンピックで最大の3枠を確保した。

 世界選手権が終われば、また次のシーズンが近づいてくる。羽生はネイサンや鍵山と、そして自分との戦いを見せてくれるのだろう。しかし優勝できなければ、また色々な声があがるのだろう。宿命かもしれないが、そう考えると切なくなる。