昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

【日本ハム】大谷翔平という物語の第一章が完結した

文春野球コラム ペナントレース2017

ファンの夢のために存在していた試合

 それからもう一つ、あぁ、最後なんだなと思わせたシーンがあった。中田翔がファウルボールを追いかけ、エキサイトシートのフェンスに乗り上がったのだ。それも一度ならずだ。何としてもアウトをもぎ取って、きれいに送り出してやりたい。中田は純な男だ。これも会話に思えた。これまでありがとうなと中田は言っていた。

 スタンドのファンはランナーを出したりすると「がんばれ大谷〜」「がんばれがんばれ〜」と小学校の運動会みたいに声援を送る。3ボールをつくってしまうと(札幌ドームの名物なのだが)いっしょうけんめい拍手して励ます。大谷が160キロを出すような超越的な存在でもあんまり関係ないんだ。僕はそんな札幌のファンが大好きだ。がんばれ大谷、がんばれがんばれ大谷。

 で、気がついた。この試合は今季初めてファンのためだけに存在している。大谷登板試合はずっと本人の復調を見るためや、あるいは大リーグの「品評会」といった具合に、つまり何というか内向きの構造だった。それがこの最後の最後で、ついにファンの夢のために存在している。「エースで4番」だ。マンガを超えた現実が見られた。投球数を気にせず9回10奪三振完封だ。金子千尋攻略の口火を切るクリーンヒットだ。

「一日でも多く野球をやっていたい。一日一日を大事にしながら、今できないことをできるようになりたい」(試合後のコメント)

 僕も3万9千人強の観客のひとりとして、この日の大谷翔平を見つめた。豆粒大だったが、自分なりのお別れはできた。さようなら大谷翔平! さようなら僕たちの夢! ありがとう、どこに行っても応援している。

ありがとう、さようなら! ©えのきどいちろう

◆ ◆ ◆

※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイト http://bunshun.jp/articles/4461  でHITボタンを押してください。

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春野球をフォロー