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2021/05/21

genre : 社会, 教育

 こうした見解は、地毛証明書を取り入れている学校で共通にみられるもので、先の東京都の報道では、都教育委員会は「事実誤認による頭髪の指導を防ぐため」と説明しており、また大阪府の報道では、府立高の校長は、地毛が茶色の場合に黒染めを強制しないよう「生徒の人権を守るための制度だ」と説明している。

人権侵害 vs. 人権尊重

 学校には、「生徒の人権を侵害している」という認識は希薄である。むしろその逆で、生徒の生まれつきの特性を証明してもらうことで、染髪の疑いを晴らせるのであり、「生徒の人権を守っている」と考えられている。ここに、校則が変わらない根源的な理由がある。

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 学校からすれば、地毛証明書を批判している者たちこそ、生徒の人権を侵害する存在である。私を含め地毛証明書に対する批判には、学校からは「現場を知らない人たち」という声が漏れ聞こえてくる。こうして学校側は、外部からの批判に耳を閉ざすことになる。

 パンテーンの動画の終盤には、教師との議論を終えた生徒の感想が収められている。生徒の一人がこう答えている。

 先生は、(私たちのことを)一番に思ってくれているんだなっていうことが、すごい伝わってきました。

 人権侵害であるはずの地毛証明書は、対話の結果、見事に「一番に思ってくれているんだ」と生徒自身に受容されていく。教師のやさしい語りかけが、生徒の心に届いたようだ。

頭髪指導という根源的問題

 それでも、私は問いたい。そこまで徹底した頭髪指導が必要なのか、と。

 地毛証明書は生まれつき茶髪の生徒を守るためだと言うけれども、そこには、「自分で髪を染めることは禁止」という大前提がある。

 地毛証明書を廃止すれば、きっと茶髪や金髪に染める生徒があらわれるだろう。教室内は、乱れまくりだ。