華麗な転身を続け「プロ経営者」と評価された
一体、藤森氏とはどんな人物なのか。藤森氏は1975年に東京大学工学部を卒業した後、日商岩井(現双日)に入社。その後に転職した米ゼネラル・エレクトリック(GE)で頭角を表し、2008年には日本GE会長兼社長兼CEOに就任。2011年にはLIXILグループ(現LIXIL)の社長兼CEOに就いている。
当時、華麗な転身を続けた藤森氏を「プロ経営者」と評価する声が高まった。同氏はLIXILグループで、海外企業を相次ぎ買収した。
11年12月にはカーテンウォール業界の名門で、イタリアにあるペルマスティリーザに約600億円、13年8月には米衛生陶器大手のアメリカンスタンダードに約530億円、14年1月には水栓金具で欧州最大の独グローエに約4000億円を投じ、それぞれ手に入れた。
しかし買収にあたって実施するデューデリジェンスがかなり甘かったようだ。グローエの中国子会社の不正会計が見抜けず、LIXILグループは660億円の損失を計上。ペルマスティリーザも巨額の損失を出した。その経営責任を取って、同グループを退任したのは2016年のことだった。
その後、LIXILグループでは藤森氏の後任社長兼CEOとなった瀬戸欣哉氏と同社の創業家出身で実質的なオーナーだった潮田洋一郎氏が対立。潮田氏は瀬戸氏を実質的に解任する一方で、CVCにLIXILを買収させ、株式を非公開化しようとした。この時にも藤森氏は潮田氏と手を結び、暗躍している。
CVC日本法人社長は東大アメフト部の後輩
ちなみにCVC日本法人で社長を務める赤池敦史氏は藤森が東大在学中に所属したアメリカンフットボール部「ウォリアーズ」の後輩である。こうした人間関係も踏まえると、藤森氏はその人脈を伝って社外取締役に就いた先で、M&A案件を探し、それを後輩が日本法人の代表を務め、自身も最高顧問として籍を置くCVCに買わせているように映る。
7日午後、東芝は取締役会を開き、買収提案について副社長をトップとするチームで検討していくことを決めた。今後、この買収劇がどう進むかは予断を許さない。しかし、今回の買収提案には、解かれるべき謎が既にいくつもあることだけは間違いない。