CVCは“車谷社長の”ホワイトナイト?
車谷氏が絶体絶命の状況の中、CVCの買収提案は飛び込んできた。今後、東芝が買収を受け入れ、株式を非公開化すれば、エフィッシモを含む「物言う株主」の揺さぶりから現経営陣は逃れることができる。さらに、CVCが現在提案しているように、東芝の株式を現在の株価よりも3割高い水準で買い取るというのであれば、うるさ型の株主は東芝株を手放す可能性もある。
つまり、CVCは“東芝の”というよりも“車谷氏の”ホワイトナイト(白馬の騎士)のように映るのだ。
そもそも車谷氏は三井住友銀行で副頭取を務めたバンカーだが、東芝の社長兼CEOに就く前はCVC日本法人会長の座にあった。車谷氏が「現在、CVCとは何の関係もない」といくら強弁したとしても、古巣が手を差し伸べている構図そのものは変わらない。
日経新聞では「広い意味での利益相反にあたる」
さらに怪しいことがある。社外取締役に就いている藤森義明氏の存在だ。ひょっとすると、車谷氏よりこちらの方が問題かもしれない。
同氏は現在、CVC日本法人の最高顧問でもある。そのポストに見合う報酬をもらっているであろう人が、片や東芝の取締役として、「買収提案に賛成するか反対するか」を主張できる立場にあるのだ。日経新聞の8日付朝刊は、車谷氏や藤森氏とCVCとの関係について触れたあとで、国内外のM&Aに携わる弁護士による次のコメントを伝えている。
〈広い意味での利益相反にあたる。注意して対応しなければ株式買収請求権や役員責任の問題につながるリスクもある〉
別のビジネス系の弁護士は「文春オンライン」の取材にこう答えた。
「車谷社長がCVCのOBだからといって、直ちに利益相反とか違法性ということにはなりません。しかし、疑念を抱かれやすい状況であることは確かです。
車谷社長にせよ藤森取締役にせよ、特別な利害関係のある取締役として、本件の取締役会決議には参加しない対応を取ることになるでしょう」
資生堂、武田薬品でも同じ構図のM&Aが
藤森氏に関しては、今回の東芝と全く同じ構図のM&Aが最近あった。2月に資生堂がヘアケア商品「TSUBAKI」を含む日用品事業をCVCに1600億円で売却した件だ。藤森氏は旧知の間柄である資生堂社長兼CEOの魚谷雅彦氏に誘われ、昨年から同社の社外取締役にも就いている。
「さらに藤森氏は過去に東芝の子会社である東芝テックをCVCに売却しようと動いたこともあります。また武田薬品工業の社外取締役という肩書を持つ一方、同社の子会社で一般用医薬品を手掛ける武田コンシューマーヘルスケアをCVCに売ろうと画策したこともある」(経済ジャーナリスト)