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「日本嫌い」リクシル会長 富豪経営者がシンガポールを選ぶのは「会社のため」なのか

マーケットが冷ややかだったのにはワケがある

2019/02/14

 ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。LIXILグループが、MBO(経営陣による買収)を行って上場を廃止し、本社をシンガポールに移転するという報道が出ています(LIXILは否定)。最近では、英家電大手ダイソンも本社を英国からシンガポールに移すと発表しています。なぜこれらの大企業や経営者は、シンガポールに本社機能を移転させたいと考えるのでしょうか。

LIXIL潮田会長

企業、人、カネが、シンガポールに向かう

 三菱商事(金属資源トレーディング部門)、パナソニック(冷蔵庫部品事業など)、日本郵船(定期コンテナ船事業)など、事業会社や一部の部門などを含めた広義の「本社機能」をシンガポールに移転している日系企業は少なくありません。株式会社メディアジャパンが作成したシンガポールに営業拠点をおいている日本企業便覧を見ると、約1500社がずらりと並んでいます。

 経営者では、LIXILの潮田洋一郎会長が既に居住をシンガポールに移しているほか、HOYAの鈴木洋CEOや「ドン・キホーテ」創業者の安田隆夫創業会長がシンガポールに移住して話題になりました。ドンキホーテホールディングス(本社東京・目黒)は、2月に株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに改名、シンガポールをアジア展開の拠点にして「DON DON DONKI」を3店舗展開しています。

「ドン・キホーテ」安田隆夫創業会長 ©文藝春秋

富裕層がシンガポールを選ぶ真の理由

 オフィス代などコストが高いのにもかかわらず、シンガポールが企業や経営者を惹きつけるのはなぜでしょうか。

 シンガポールが選ばれる理由として、政治リスクの低さ、ICOやIPOなど投資の資金調達が活発であること、ベンチャーへの助成や支援の多さ、成長する東南アジアの市場への地理的な利点、アメリカなどと比べると日本などから従業員を連れて行ってもビザが比較的簡単に取れる、行政手続きがオンラインでできて早い、子息を教育するインター校が充実しているなど数々のメリットを挙げることができます。シンガポールが米朝首脳会談の開催地となった際には、国として富裕層へ最高のおもてなしができると世界中に印象付けました。

 しかし、最大の理由は税制の優遇をおいて他にはないでしょう。シンガポールはタックスヘイブンなので多くの国の個人や法人にとって自国よりも税金の優遇があるからです。