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「日本嫌い」リクシル会長 富豪経営者がシンガポールを選ぶのは「会社のため」なのか

マーケットが冷ややかだったのにはワケがある

2019/02/14
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 シンガポールの法人税率は17%で、世界でも最も低い税率国の一つといえます。また、軽減税率を考慮すると、課税所得が30万シンガポールドルまでは実効税率が8.5%程度となって、その他の特別措置も頻繁に行われているために税負担は日本の国・地方を合わせた法人実効税率29.97%と比較すると著しく軽くなるのです。ただし、税制の優遇を受けるにはシンガポール国内で経営や管理をする必要があります。本社が日本にあって、支店がシンガポールという場合では、税制の優遇が受けられないこともあるのです。

住民税ゼロ、所得税の最高税率は日本の半分以下

 シンガポールに住所を移すことは、日本人の経営者や役員など個人にも大きなメリットがあります。シンガポールは住民税ゼロ(日本は10%)、所得税の最高税率は22%(日本は45%)、シンガポールの永住者でなければ社会保険料に当るものを支払うこともないからです(非居住者は日本の社会保険料も払う必要はなくなります)。

「給料を減らしても手取りが増えた。今まで、日本で取られていたのは何だったんだろう」という日本人の経営者やエリート会社員も多いのです。

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©文藝春秋

“相続税逃れ”対策の「10年ルール」

 また、シンガポールには相続税や贈与税もありません。特に国税と幾度となくやりあっている潮田家にとってはこの問題が非常に大きいと推測されます。ただし、日本政府も“相続税逃れ”への対策をしており、相続税法の「10年ルール」と呼ばれるものがあります。

「10年ルール」を大雑把にまとめると、家族全員で海外に移住しても、10年未満ならば海外に移した資産の相続税や贈与税を課せられる、というルールです。言い方を変えれば、10年超待てば、海外に移した資産に関して、原則的に日本の相続税や贈与税を課せられずに済む、というルールです。

 以前は「10年ルール」ではなく「5年ルール」だったのですが、富裕層を海外に逃さないために、ルールが厳しくなりました。相続事業承継のために、ただ時が過ぎるのを待ちながらシンガポールで暮らしている日本人のウルトラハイネットワース(超富裕層)もいるのです。