国際オリンピック委員会(IOC)のグループ会社「オリンピック・チャンネル」日本語版が、オリンピック憲章に反した記事を掲載していたことが、わかった。
オリンピック・チャンネルは、オリンピック関連の記事や動画をインターネット配信している会社だ。IOCを親会社とする株式会社と有限会社で構成され、株式会社の社長をバッハ会長、有限会社の社長を故サマランチ会長の息子サマランチ氏が務めている。
問題の記事は、「オリンピックのメダル数ランキング 多くメダルを取っている国は?」と題し、オリンピック・チャンネル編集部が2020年1月に自社ウェブに掲載した。
禁断の「メダル数ランキング」
「日本は世界で11番目に多くメダルを獲得しており、その内訳は金メダルが142個、銀メダルが135個、銅メダルが162個である」(原文ママ)
「前回のリオデジャネイロ五輪では、日本最多となる1大会で41個のメダルを手にした」
「最もメダルを手に入れた国はアメリカ合衆国で、総数2522個を記録して2位以下に1000個以上の差を付けている」……
こうしたうんちくと共に、夏冬大会でメダルを獲得した上位20カ国の金、銀、銅のメダル数の内訳を記している。
だが、憲章57条は「IOCとOCOG(組織委員会)は国ごとの世界ランキングを作成してはならない」と定めている。オリンピックはあくまで「スポーツの祭典」であり、国家同士の対抗戦ではないとの建前を担保するため、憲章でIOCとOCOGに制限をかけているのだが、問題の記事は「国ごとの世界ランキング」以外の何物でもない。
日本オリンピック・アカデミー副会長の舛本直文東京都立大・武蔵野大客員教授は「オリンピック・チャンネルは、IOCの公式チャンネル(広報ツール)ですから、IOCのオリンピック憲章に支配されます。ご指摘のように第57条に抵触するようなメダルカウントやランキングはしてはならない」と、IOCの憲章違反を指摘した。
しかも、記事は夏季大会のランキング11位の日本のメダル数を「金メダル142個、銀メダル136個、銅メダル163個、総数441個」と記し、前文のメダル数と一致しないという、じつにいい加減な内容だ。