問い合わせると記事は突然削除
筆者は今年3月初めから、IOCにメールで見解を求めていた。しかし、2度の問い合わせに対し、期限までに回答はなかった。
だが、IOCに加え、オリンピック・チャンネルに問い合わせをした3月下旬、当該記事はサイトから突如消えた。その後、同タイトルでサイトを検索すると、「夏季五輪・冬季五輪のメダル獲得数|日本のアスリートは夏季441個、冬季58個のメダルを獲得」との記事が示された。メダル獲得数上位20カ国を紹介し、ページトップの写真は同じものを使っているが、国名の横にあった順位数のナンバリングはなくなった。
東京2020オリンピック・パラリンピック大会組織委の森喜朗前会長は、女性蔑視発言が憲章で定めた差別禁止に反するとして辞任に追い込まれた。オリンピック・チャンネルの社長はバッハ会長が兼務しており、IOC自体の企業統治(ガバナンス)不在も露呈した格好である。
IOCは3月29日、「回答が遅れたことをお詫びします。本件についてお知らせいただきありがとうございます。記事は適切に修正されました」と、メールでコメントした。だが、IOCやバッハ会長、日本語版編集者の責任について言及はなかった。
新型コロナウイルス禍は、「平和の祭典」「スポーツの祭典」と称するオリンピックがIOCによる興行にすぎないことを世界にさらけ出した。IOC自らのオリンピック憲章違反はその一端を示した。
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「文藝春秋」5月号および「文藝春秋 電子版」掲載の『東京五輪はバッハIOC会長の喰い物にされた』では、「世界最大のスポーツ興行主」であるIOCのダブルスタンダードの実態を詳述している。
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